胎盤剥離,前置胎盤および原因不明の子宮出血と妊婦の喫煙 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzen_news/13.html#6
第13号

「胎盤剥離,前置胎盤および原因不明の子宮出血と妊婦の喫煙」
胎盤剥離や前置胎盤は,胎児死亡,死産,新生児死亡,出生時低体重などを高率に引き起こすことが知られている.

胎盤剥離や前置胎盤の原因はまだ解明されていないが,疫学調査によると,その誘発要因として母親の妊娠年齢,経産歴,多胎,子宮腫瘍,子宮内膜や子宮筋の障害,外傷,高血圧などが報告されており,胎盤剥離や前置胎盤を経験した女性は,再発の危険性も指摘されている.

一方,母親の喫煙が胎盤剥離や前置胎盤の誘因となることも報告されているが,これまでの報告にはいくつかの問題点がある.

たとえば,妊娠中の喫煙については患者の曖昧な記憶に頼っていること,サンプル数が少ないために喫煙と子宮胎盤障害との間に用量・反応関係があるか否かを評価できないこと,さらには調査した女性が通院していた病院に偏りがあることなどである.

そこで今回は,胎盤剥離および前置胎盤,さらには原因不明の子宮出血について,喫煙との因果関係を明らかするために大規模な疫学調査を実施した.
 調査は,1986年1月1日から1993年12月31日の間に,カナダのノバ・スコチアにある2つの大病院(49425人), 7つの中病院(28203人), および17の小病院(9556人)の産科に通院した女性を対象とし,述べ87184人の妊婦について実施した.

そのうち,妊娠中に煙草を吸った女性は27669人(32.7%), 妊婦1000人あたり,胎盤剥離は9.9人,前置胎盤は3.6人,原因不明の子宮出血が58.9人でみられ,喫煙女性では喫煙しなかった女性と比較すると,胎盤剥離が2.1倍,前置胎盤が1.4倍と多かったことがわかった.

原因不明の子宮出血については,喫煙と非喫煙女性との間に明らかな差は認められなかった.

今回の調査では,妊娠中に吸った煙草の本数についても集計したが,子宮出血の発生率と煙草の本数との間に相関性は認められなかった.
 これまでの調査では,胎盤剥離は 0.5~2.5%,前置胎盤は 0.2~1.0%の頻度で発生していることが報告されているが,今回の調査でも胎盤剥離は1.0%,前置胎盤は0.4%の頻度で発生したことがわかった.また,胎盤剥離および前置胎盤については,妊娠中の喫煙によりその発生率が増加することが明らかとなったが,原因不明の子宮出血については,喫煙との関連は明確ではなかった.

したがって, 原因不明の子宮出血は,その原因を究明する際に,胎盤剥離や前置胎盤とは区別して検討する必要があろう.
 妊娠中の喫煙が及ぼす胎盤剥離の発生メカニズムについては,いくつかの報告がある.

例えば喫煙者の胎盤は非喫煙者よりも腫大し,表面積が増大していることから子宮の循環障害を起こしやすいという報告,喫煙者は非喫煙者よりも低酸素症を起こしやすいという報告などがある.

また,喫煙が血管内皮細胞の変化を誘発し,続いて血管収縮,動脈硬化,胎盤の循環障害を起こし,その結果として脱落膜壊死と出血を伴った基底脱落膜の乏血を来すと指摘している報告もある.

これらの報告は,いずれも喫煙が子宮・胎盤障害の発生率増加の原因に成り得ることを示している.
 喫煙歴については,母親の自己申告をもとに集計しているため,妊娠中の喫煙は,その危険性が過少評価されてきたかもしれない.

ある報告では,妊娠に気が付いた時点で禁煙した女性は,約18%であったという.コカイン使用についても喫煙と同様,胎盤剥離の要因となるが,残念ながら今回の調査ではコカイン使用の有無についての調査は行っていない.

今後も妊婦の喫煙歴をさらに注意深く調査し,コカインの使用も含む確かな情報を得ることが,子宮・胎盤出血の病因を解明する助けとなるであろう.
 ノバ・スコチアでは,女性3人に1人が妊娠中に煙草を吸っているが,妊娠中の喫煙をやめれば27%の胎盤剥離と12%の前置胎盤が避けられる.

子宮胎盤出血の危険性を増加させる原因を喫煙のせいにするのは,妊娠中の女性たちに禁煙を奨励する多くの理由の一つに過ぎない.