神経系の疾患(アルツハイマー病を含む) | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/

・漢方治療エビデンスレポート 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース

神経系の疾患(アルツハイマー病を含む)

1. 目的
抑肝散のハンチントン病に対する有効性と安全性の評価
2. 研究デザイン
ランダム化比較試験(cross over) (RCT-cross over)
3. セッティング
実施施設に関する記載なし(筆頭著者は国立米沢病院)
4. 参加者
ハンチントン病患者の女性4名(48, 51, 52, 68才)
5. 介入
Arm 1: ツムラ抑肝散エキス顆粒(投与量は不明) を8週間投与後、4週間wash-outし、ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(投与量は不明) を8週間投与 2名
Arm 2: ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(投与量は不明) を8週間投与後、4週間wash-outし、ツムラ抑肝散エキス顆粒(投与量は不明) を8週間投与 2名
6. 主なアウトカム評価項目
運動機能をハンチントン病統一評価尺度の運動評価(UHDRS-m) で、認知機能をMMSE (Mini-Mental State Examination) で、日常生活動作をBarthel IndexでArm 1とArm 2の抑肝散投与開始時と終了時、柴胡加竜骨牡蛎湯の投与開始時と終了時に評価した。
7. 主な結果
UHDRS-mは、抑肝散投与時に4名とも低下し106.3±4.7から89.6±5.8へ有意に低下した(p=0.0004) 。柴胡加竜骨牡蛎湯投与時は4名中3名が低下し105.5±3.8から101±2.9と経過したが有意な変化を認めなかった。

MMSEとBarthel Indexはいずれの薬剤を投与時も変化を認めなかった。
8. 結論
抑肝散はハンチントン病患者のUHDRS-m改善に有効である可能性がある。
9. 漢方的考察
なし
10. 論文中の安全性評価
抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯の投与により血算、血液生化学検査で異常所見を認めなかった。
11. Abstractorのコメント
難治性疾患のハンチントン病に対する抑肝散の効果をUHDRS-mにより客観的に評価した臨床研究である。

また、本ジャーナルは動画を見ることができることから、読者に大きなインパクトを与えるものと考えられる。

稀な疾患で症例の収集が困難にもかかわらず、抑肝散の効果をクロスオーバーデザインにより評価しようとした試みは意義がある。

しかし、参加者4名の中には柴胡加竜骨牡蛎湯投与時の改善度が他の症例の抑肝散投与時より改善している症例もあり、クロスオーバーデザインとして厳密な解析がなされるとより価値が高くなると思われた。

また、確立した治療法がないためコントロール群を設定しにくいことが考えられるが、漢方薬以外の対照薬の使用も考慮される。

今後、著者らも述べているように、症例数を増やした比較対照試験の実施が望まれる。

しかし、稀な疾患で治療薬がない現状で、仮説的とはいえ抑肝散の有効性を示唆する結果を得られたことは、意義深い臨床研究である。
12. Abstractor and date
後藤博三 2010.6.1