・■9月28日朝日 除染基準 労力と効果勘案 地元への説明不可欠
国の責任で除染する地域を、年間の追加被曝線量が5ミリシーベルト以上の範囲とする環境省の方針が固まった。
除染事業は来年から本格化するが、問題は山積している。
国が安全を強調しても、自治体や住民が安心できる仕組みでなければ、絵に描いた餅になりかねない。
環境省は27日の環境回復検討会で、除去が必要になる土壌や落ち葉などの量について九つのシナリオに基づく試算を示した。
年間の追加被曝線量は①20ミリシーベルト以上②5ミゾシーベルト以上③5ミリシーベルト以上を原則として局所的に1ミリシーベルト以上の三つとした。
5ミリシーベルトは、1日のうち屋外で8時間、屋内で16時間過ごすことなどを仮定すると毎時換算で約1マイクロシーベルトになる。
①~③のうち、除去量が景大となったのは③の条件で森林を100%除染するシナリオで2900万立方メートルだ。
これに対して森林も含めて土壌を一律深さ5センチ除去すると1億立方メートルになるという試算があるが、今回は森林では土壌を除去せず落ち葉の回収などにとどめることを前提としたため、大幅な滅量につながった。
環境省の方針策定にあたっては、除染の原則を5ミリシーベルトとする根拠をどこに求めるかが一つの焦点になった。
線量が低い地域ほど、さらに下げるのは技術的に難しいとされる。土壌を除いたり建物や側溝を水洗いしたりしても、除染した地域の周囲に残存する放射性物質が流入する可能性があるからだ。
環境省の幹部は「1ミリシーベルトが理想だが、それにこだわっていてはいつまでも除染が完了しない」とし、除染にかける労力やコストと、効果をはかりにかけたうえでの方針であることを認めた。
国の責任で実施する除染の費用は法律上、国が立て替えたうえで東京電力に賠償を求めるが、隈界がある。
一方、福島市や伊達市など国に先行して自治体の除染計画を策定する動きがあるが、除染の墓準は自治体ごとに異なりそうだ。
国が5ミリシーベルト以上を原則にした場合、それ以上の除染を望む自治体は、自已負担で実施しなければならなくなる。
また、除去した土壌を保管する中間貯蔵施設の設置揚所も決まっていない。
ホットスポットの除染も課題だ。
周辺は1ミリシーベルト以下なのに、雨どいや側溝などが局所的に飛び抜けて高い線量を示す地点が対象として想定されるが、実際にどの範囲まで除染するかは未知数だ。
検討会のメンバーの一人で、研究機関などで出た低レベル放射性廃棄物の処理を担う原子力研究バックエンド推進センターの森久起専務理事は、住民の安心につなげるために「国に積極的な説明責任が求められる」と指摘する。(森治文)
福島市、全戸除染毎時1マイクロシーベルト目標
福島市は27日、市内全域を対象とした除染計画を発表した。
約11万戸のすべての住宅のほか、学校や公園、遺路、公共施設などに重点を置いて実施する。
来年度末までに、市民が日常生活を送る揚所の全域で、空間放射線量を毎時1ミリシーベルト以下にするとの目標を掲げた。
記者会見した瀬戸孝則市長によると、場所によっては同約3マイクロシーベルトが測定されている大波地区と渡利地区を最重点地域、一部で線量が高い8地区を重点地域に指定する。
10月に最重点地域から除染作業に取りかかる。
現在の線量が同ミリシーベルト以下の地域は60%の低減を目指す。行政だけで全域の早急な除染は難しいとして、線量が低めの場所などでは市民やボランティアに協力を求めるという。
除染で生じる土などは、住宅や公共施設では敷地内に仮置き保管。
道路や側溝などから出るものについては市内数カ所に仮置き場を確保する。(鬼久保幹男)