・■朝日9月3日 除染 首都圏動く 校庭の土入れ替え側清を清掃自治体、不安の声受け
首都圏でも、学校や公園の砂や土を入れ替え、側溝を清掃する動きが広がっている。
東京電力福島第一原発の事故による放射性物質を除染しようという取り組みだ。政府が除染方針を示したのは8月末で、各自治体はそれに先駆けて独自の対応をとってきた。
東京都内では足立や葛飾、練馬の各区などが砂場の除染を進めている。
足立区は8月10日から小学校や幼稚園、公園などの砂場593カ所のうち、毎時0・25マイクロシーベルト以上が出た35カ所で砂を入れ替えるなどした。
原発事故による被曝を年間1ミリシーベルト以下とする国際放射線防護委員会の目標値を参考に、毎時0・25マイクロシーベルト以上の場所は年1ミリシーベルトを超えると計算した。
葛飾区も同じ基準で20カ所の砂揚で砂を入れ替える。
「放射性物質がたまりやすい側溝のこまめな清掃や、高圧洗浄機を使うことも検討している」(同区の担当者)。
茨城県守谷市は8月22日から、市内の公立小学校や保育所11カ所でグラウンドの土を入れ替えた。
文部科学省が主に福島県内の学校向けに示した除染基準の毎時1マイクロシーベルトを超える地点はなく、当初、本格的な除染はしてこなかった。
しかし6月、市民ら1千人余から文科省基準より低い放射線量でも対応するよう、「子供の被曝を年間1ミリシーベルトに近づける」ことを求める請願が出され、市議会が採択した。
橋本孝夫副市長は「少しでも放射線量を下げてほしいと思う親たちが安心してくれるのであればと考え、方針転換した」。
土の入れ替えの費用は私立幼稚園などへの補助も含め約6千万円かかったという。
政府の原子力災害対策本部は8月26日、除染の方針を示した。
福島県の避難対象地区以外でも「推定年間被曝線量が1ミリシーベルトに近づくことをめざす」とした。
市町村の除染は国が支援するとしているが、福島県外のどこが対象になるかは、はっきりしていない。
局所的に放射線量が高くなる「ホットスポット」現象が起きた千葉県北西部。柏市はこれまで、近隣の5市と歩調を合わせ、文科省基準の毎時1マイクロシーベルトで側溝や雨どいなどの局所的な除染を進めてきた。
だが、原子力災害対策本部の方針を受け、9月1日に年1ミリシーベルトに基準を引き下げて、表土を削るなど本格的な除染を進めることに決めた。
同市放射線対策室の松澤元・担当リーダーは「安全の基準を探すのに注力してきたが、100%の安全は証明できず、多くの市民が不安に思っている」。
今後、国の補助が受けられるかどうかを確認し、学校や公園など市全域を対象にした除染計画を作るとしている。
除染目標設定住民参加を
住んでいる地域で放射線の影響を減らしたいという住民の希望に対して、首都圏の自治体の対応は必ずしも積極的ではなかった。
子どもへの影響を心配する親たちが独自に測定機器で放射線量を測り、ネツトで情報を公開する動きが広がった。
自治体にも対策を求めたことで、除染活動が動きつつある。
住民と自治体がすれ違う一因は、放尉線の健康への影響で「年何ミリシーベルト以下は安全」という境界線がないためだ。
積極的に除染した福島県内の学校などに比べ、放射線量が低い首都圏では行政側の危機感が薄かった。
これに対し、住民には将来の健康リスクを避けるため、できるだけ放射線量を下げたいという思いがある。
政府は除染の基本方針で長期目標として「年間1ミリシーベルト以下」とした。汚染状況は地域によって違うが、首都圏でも年間1ミリを超えそうな場所がある。
自治体ことに汚染状況を詳しく調べ、住民も参加して除染の目標を考えていく段階にきている。(編集委員・浅井文和)