出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
自閉症と水銀の関係
佐藤章夫 (栄養医学研究所所長)
(3)日本人の水銀曝露量
日本人の食品からの水銀(総水銀)の摂取量は、厚生労働省のトータルダイエット調査によると、2003年において8.1μg/人/日(体重50kgで1.1μg/kg体重/週)、このうち84%が魚介類からの摂取とされている。
1994年から2003年の過去10年の平均は、8.4μg/人/日(1.2μg/kg体重/週)と報告されている。
メチル水銀値は総水銀値よりも低いので、メチル水銀の摂取量はより小さい値となり、ここで求められた耐容週間摂取量2.0μg/kg体重/週より小さい。
但し、これは平均値の比較であり、実際の摂取量の変動幅のデータは無い。
全国各地で毛髪を採取し総水銀を分析した報告では、女性の毛髪水銀濃度の幾何平均は1.37ppmである。
さらに詳細に15-49歳の女性の毛髪水銀濃度の分布を見ると、1ppm以下の人が集団の26.3%を占め、2ppm以下は77.8%、5ppm以下は98.3%、10ppm以下では99.9%である。
このことは、ほとんどすべての人々が、耐容週間摂取量の算出の出発点となったBMDLとNOAELに相当する値の平均値11ppmより低値であることを示している。
(4)ハイリスクグループについて
メチル水銀の重大な影響が発達中の中枢神経系に関わるものであり、胎児期の曝露が最も感受性が高いとの科学的知見に基づき、諸外国では、妊婦あるいは妊娠している可能性のある方を摂食指導の対象者としていることについて共通であるが、それ以外の対象者を含めるべきか否かについては各国により異なっている。
我が国においては、ハイリスクグループを感受性が高く曝露も高い集団として評価するのが適切と考えた。
① 胎児について メチル水銀は、血液‐脳関門だけではなく、胎盤も通過して胎児に移行することから、発達中の胎児の中枢神経が最も影響を受けやすいと認識されている。
また、ラットにおける胎仔期から出生時までの脳中水銀濃度は、母親に比べて約1.5~2倍高い濃度になること、ヒトにおける妊娠中の母親の赤血球水銀濃度に比べ、臍帯血の赤血球の水銀濃度は平均で1.4倍高いこと、全血のメチル水銀濃度比も1.9という報告もあることから、胎児の水銀曝露は特に高いことが考えられる。