自閉症と水銀の関係:シリーズ(1)9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(2)その他の主要な毒性に関する研究
心臓毒性に関する研究
近年、東部フィンランドで心血管系のリスクファクターを明らかにするコホート研究(Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study (KIHD))が行われており、そこからいくつかの論文が発表されている。

対象はベースライン調査時に42、48、54または60歳のフィンランド人男性3,235人で、2,682人(82.9%)が参加した。それらの結果を以下に記述する。
①毛髪水銀濃度と、急性心筋梗塞(Acute Myocardial Infarction;AMI)の罹患率、並びに冠状動脈心疾患(Coronary Heart Disease;CHD)および心血管系疾患(Cardiovascular Disease;CVD)による死亡率との関連について、1,833人を対象に調査した(追跡期間:2-7年、平均約5年)。

年齢、冠状動脈血栓症、魚の摂取を統計的に調整すると、毛髪水銀濃度が2.0 mg/kg以上の群の男性は、残りの群の男性と比較して、AMIのリスクは2.0倍(95%信頼区間、1.2~3.1)、CVDによる死亡は2.9倍(95%信頼区間、1.2~6.6)となった。(Salonen et al., 1995(11))
②アテローム性動脈硬化について、1,104人を対象に4年間の追跡調査を行った。各々の男性で頸動脈の超音波検査を行い、内膜-中膜の厚さについて調べたところ、高血圧、薬物治療、喫煙、年齢、一日あたりの鉄分摂取、ビタミンC摂取、血漿中フィブリノゲン量、高濃度リポ蛋白質e(High-Density Lipoprotein;HDL)、最大酸素吸気量、フルクト酸、脂肪酸を調整すると、2.81mg/kg以上の毛髪水銀濃度を示した群における内膜-中膜の厚さがその他の群と比較して32%厚かった。(Salonen et al., 2000(12))
③虚血性心疾患のリスク要因について、1,871人を対象に追跡調査を行った(平均追跡期間:13.9年)。

ベースライン調査時の年齢、HDL、低濃度リポ蛋白質(Low-Density Lipoproteine;LDL)、両親の心筋梗塞、高血圧、体脂肪指標(BMI)、最大酸素吸気量、尿によるニコチンの排泄、セレン、DHA+DPA、アルコール摂取、飽和脂肪酸、繊維質、ビタミンC、Eを調整すると、2.03mg/kg以上の毛髪水銀濃度を示した群は、その他の群と比較して、急性冠状動脈血栓症のリスクが1.6倍(95%信頼区間、1.24~2.06)、CVDのリスクが1.68倍(95%信頼区間、1.15~2.44)、CHDのリスクが1.56倍(95%信頼区間、0.99~2.46)であった。(Virtanen et al., 2005(13))
別の研究では、ヨーロッパの8ヶ国又はイスラエルに住む心筋梗塞と診断された70才以下の684人の男性と、同地域で同様の年齢構成の724人の男性とで症例対照研究を行った。

年齢、施設、DHA、BMI、喫煙、飲酒、HDL、糖尿病、高血圧、両親の心筋梗塞、α-トコフェノール、β-カロチン、セレンを調整すると、足爪水銀濃度で5群に分けた中の最高足爪水銀濃度の群における心筋梗塞のオッズ比は2.16(95%信頼区間、1.09~4.29)であった。(Gualar et.al., 2002(14))
他方、関連が無いとする調査もある。40~75歳の健康な男性33,737人の足爪の水銀レベルとCHDのリスクの関連を調査し、5年の追跡期間を経て、470例のCHDを記録した。

CHDに罹患した年齢、喫煙、他のリスク要因を調整すると、水銀レベルはCHDのリスクと有意に関連しなかった。

最高値の群と最低値の群を比較すると、CHDの相対的なリスクは最高値の群で0.97(95%信頼区間、0.63~1.50)であった。(Yoshizawa et al., 2002(15))