風車騒音・低周波音による健康被害5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・①汐見文隆医師の研究によると、健康被害をもたらす低周波音の周波数(Hz)レベル、音圧(dB)レベルは、従来、10Hz~40Hz とされ、音圧は被害者により差があり、50dB~80dB近くまで(60dB前後が多い)とされていた。

低周波音の中でも50Hz以上の周波数帯域の音は、聴こえにくいが聴こえる音として、被害をもたらすよりマスキング効果(音の消去効果)としては作用するとされる。
②風車から出される低周波音・超低周波音については、被害現地(愛知県田原市・愛媛県伊方町)での1/3 オクターブバンドでの実測にもとづき、その測定値を分析すると、20Hz から下の周波数帯域にむかって、徐々に音圧が高まり10Hz 以下ではさらに音のエネルギーが大きくなっている(音圧が高まっていく。)ことがわかる。
比較にあたっては、測定条件、地形などの考慮が必要だが、①風車稼動時と停止時、あるいは②高稼働時と低稼働時との音圧差をみると、周波数帯域により異なるものの、①では、ほぼ10~15dB の音圧差になり(伊方町の場合)、②でも、10~17dB 程度の音圧差(田原市の場合)がある。風車の稼動により20Hz 以下の超低周波音帯域で大きな空気振動エネルギーが伝播してきていることがわかる。
③前記の測定値を20Hz 以上の周波数の低周波音帯域で比較すると、風車停止ないし低稼働では、稼動あるいは高稼働より多少のエネルギー減がみられる程度である。有意な差ではない。

つまり、風車稼動にともなう音圧増は圧倒的に超低周波音の寄与によると考えることができる。
④風車稼動による20Hz 以下の周波数帯域でのこのようなエネルギー量の高まりのなかで、10Hz 以下ではさらにその差が大きくなる。

そのなかでも特に、2Hz と3.15Hzは70dB を超える卓越した音圧を示している。

周辺は60dB 以下である。

卓越周波数と呼ばれるが、その周波数帯では周辺の周波数帯域より一段と高い音圧になっているということである。

汐見医師はこの卓越値をともなう周波数帯域が被害をもたらすとしている。
⑤風車が稼動しているときに、二重サッシの窓を閉めた状態で測定する。(伊方町)音圧はさほど下がらない。

音が窓を透過、あるいは回折して室内に滞留していることがわかる。

騒音は窓、壁により遮断できるが、低周波音、超低周波音は窓、壁を透過・回折して室内に入り込んでくるのがわかる。

3、超低周波音の伝播力と風車建設の距離規制(セットバック)
超低周波音は波長の長い空気振動(圧力変動波)である。

その波長は1 Hz で340m、10Hz で34m、測定された卓越周波数の2 Hz では170mにもなる。

こうした波長の長い超低周波音は塀や壁を透過、回折するだけではない。

伝播中の減衰力が弱く遠方まで伝わる。

聴こえない音の波は聴こえる音の波と比べると、はるか遠くまで伝わっていくのである。
したがって風車の超低周波音による健康被害を出さないためには、人の居住区から遠く離して風車を建設するほかに方法はない。

その距離は少なくとも2kmは必要である。2kmの距離があればほぼ被害は防げると考えられる。

イギリスのアマンダ・ハリー氏は、安全を見込んでとりあえず1.5 マイル=2400mが必要としている。

フランス医師会連合は1.5 キロのセットバックを推奨している。ドイツは風車建設を海上に移した。

2kmのセットバックの国もあると聞く。

NEDOの指導では日本は200mである。

4、低周波音の音圧規制と参照値
産業の育成・発展を阻害ないし停滞させずに低周波音の音圧を規制することは不可能に違いない。

各国で低周波音の音圧を法的に規制しないのは、多分、そのためである。

しかし低周波音は人の健康をそこなう。

特に風車の超低周波音による被害は甚大である。そこでヨーロッパ諸国は距離規制(ゾーニング)で問題を解消する方向に向い出した。

日本はそれに追いつけないでいる。

というより、いまだに事業者本位にしか考えていない。
距離規制(ゾーニング)の問題ばかりではない。

音圧規制についても考え方が異なるようだ。ドイツ、デンマーク、オランダ、スウェーデン、ポーランドなどでは、低周波音に関して、規制基準あるいは推奨基準値を定めている。

それらは日本の参照値よりずっと厳しい音圧レベルに設定されている。ポーランドが特に厳しく、基準に達すればおそらく被害は出ないだろう。

しかしこれらは多分、法的規制値ではない。事業者に求められている努力目標基準値だと思われる。
これに対して日本の参照値は「苦情に関する参照値」である。

苦情(被害ではない。)に対応するものとしての参照値、つまり苦情が訴えられた際の事業者の目安として定められたものである。

「参照値を目安に苦情に対処せよ。」というわけだ。

参照値そのものが事業者のために定められているのである。
環境省の「低周波音問題対応のための評価指針」には、次のように書かれている。

「本参照値は、低周波音によると思われる苦情に対処するためのものであり、対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラインなどとして策定したものではない。」環境省もまた、低周波音健康被害の問題をはじめから事業者保護の立場で被害者を切り捨てる方向で考えているのである。以上
汐見文隆医師著作一覧
1、「左脳受容説」-低周波音被害の謎を追う-(ロシナンテ社)
2、「低周波音症候群」-聞こえない騒音の被害を問う-(アットワークス社)
3、「わかったら地獄」-低周波音被害者の悲惨-(低周波騒音問題研究会)
4、「隠された健康被害」-低周波音公害の真実-(かもがわ出版)
5、「道路公害と低周波音」(晩聲社)
6、「低周波公害のはなし」(晩聲社)
7、「低周波音症候群を語る」-環境省”参照値”の迷妄-
8、「聞こえない音が人間を襲う」-低周波音による住民被害を追って-
(ロシナンテ社 月刊「むすぶ」No452掲載)
※風車騒音・低周波音被害に関する著作
1、「風力発電はこれでよいのか」-住民を襲う超低周波空気振動-
(ロシナンテ社 月刊「むすぶ」No448掲載)