風車騒音・低周波音による健康被害3 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・5、風車騒音・低周波音健康被害の発生状況
日本では、風車騒音・低周波音による健康被害が各地で多く訴えられているにも係らず、専門家による疫学調査はまったくおこなわれていない。

環境省は「低周波音による直接的な意味での生理的影響を明確に証明しうるデータは得られなかった。

しかし、いろいろな条件下で、頭痛、吐き気などの生理的影響を起こす可能性について調査・研究が必要である。」(環境省-参考資料-)としながら、実際は、低周波音健康被害の存在を認めず、調査・研究もしていない。

この点に関しては、環境省をはじめとする所管官庁、音響工学研究者、医学研究者、医師などの意図的怠慢が指摘されても仕方がない。
ここでは、愛知県豊橋市細谷地区の被害者の会によるアンケート調査、わたしたちの聴き取り調査、静岡県東伊豆町天目地区住民自治会によるアンケート調査により、風車騒音・低周波音による被害の症状・発生状況について、簡単にまとめておく。
①豊橋市細谷地区の場合
渥美半島の付け根(浜名湖寄り)に位置する豊橋市細谷地区は、三浦半島などと同じように、山岳部を持たない段丘状の比較的平坦な土地である。

一帯は赤ぢそ、たばこなどの栽培が盛んな畑作地帯で、農家は集落をなすというより点在している。世帯数、住民数は不明。

そこに一昨年のはじめに土地取得など住民の協力を得て、M&D グリーンエネルギ-(株)により1基の風車が完成、1月末に稼動を開始した。

たちまちのうちに被害の訴えが続出、3月には被害者の会が結成されている。被害を訴えた住民の数は26名、症状は前記した通りである。

訴えの範囲は、風車から200m~700m におよび、なかには900m、1300m も離れたところに住んでいる住民からの訴えもある。
被害住民は、事業者、市、県、国の所管官庁、その他への要望、要請、陳情、請願などの活動を現在も繰り返し続けている。

②東伊豆町熱川天目地区の場合
天城連山の主稜線を町境とする東伊豆町は、稜線から太平洋へと落ちるいくつかの支稜により厳しい地形をなしている。

町民の居住区は海岸線近くの一部の平坦地がほとんどである。

この厳しい地形と美しい海と山の景観を利用して40年ほど前から別荘地が開発されてきた。

熱川天目地区はその一つである。

標高700m ほどの天目山とその北側の山との間の標高300m~450mのところに居住区が造られている。
居住区は別荘地として利用されるのみならず、現役を引退し、老後を静かな環境のなかで過ごそうとする人たち、48世帯、96名が定住している。
昨年末、この天目山稜線上に、居住者への説明もなく10 基の風車が建設され、直ちに試験運転が開始された。

運転は5基前後が中心で全基運転は数日のみ、風況によっては10 基全部が停まっている日もあった。

4月8日に低気圧通過にともなう強風と落雷により2基のブレード3枚が破損(2枚は付け根から折損破壊して近くの町道一帯に飛散)、ナセル(発電機、増速機が収められている箱、タワー上部に取り付ける。)も壊れた。

現在は運転停止中、原子力保安院の指導のもとに原因究明と安全対策が検討されている。

この間の運転期間はほぼ3ヶ月、停止日数を考えると3ヶ月に満たない。
ところがこのわずかな期間に、それも試験運転開始から間もなく、風車騒音・低周波音による健康被害の訴えが続出した。

アンケートによれば、定住48世帯のうち21世帯で前記症状などの被害の届けがあり、96名の定住者のうち30名あまりから身体変調(健康被害)の訴えがあった。

世帯数では4割強、定住者数では3割強にもなる。

一気に被害が出ているのだ。

豊橋市細谷地区もそうだが、こうした被害の大量発生が風車による、20HZ 以下の超低周波音を含む低周波騒音健康被害の特徴である。

風車以外ではこうした短期間における被害の大量発生はみられない。
居住区は高齢者がほとんどである。

高齢者はもともと持病をもっている方が多い。
そこに風車の低周波音が襲ってきた。

高血圧や身体のふらつきに悩まされた方が多くいたと聞いている。

なかには血圧上昇からくも膜下出血などで倒れ、亡くなられた方が2名いる。そのほかに入院を余儀なくされた人が2名、外耳を腫らせた方もいる。

風向と風速状態によっては歩行が自由にならない人もいた。
風車が止まっている現在、血圧上昇、歩行困難、外耳の腫れ、頭痛、耳鳴り、めまい、その他などの多様な身体症状の訴えはない。

症状は消失している。

この秋以降に予定されている運転の再開、その後の本格稼動を前に、天目の人々は静かな日々を惜しむようにして生活している。

③風車からの距離と健康被害
風車による低周波音健康被害は超低周波音によるものと推測されている。

超低周波音は、低周波音以上に距離減衰力が弱く、遠方まで伝播する。被害は、風車からの距離1km以内に住む人に多発する傾向がみられるが、地形などにより1kmを超えた遠方でも発生している。

音波が遠方まで届くからである。

また山岳部では特に、地形の影響を考慮する必要がある。東伊豆町天目では、地形により風車から350m~700mの地点に3箇所、音が溜まると思われる場所があり、そこでは他の場所よりほぼ3倍の被害の訴えがある。

また、風車から1キロ先に住んでいる人も被害を訴えている。(被害調査結果報告)
豊橋市細谷地区でも1.3km離れたところの住民に被害が出ている。

ニア・ピアポント氏の報告では、オランダとドイツ国境に建設された風力発電施設では、1.9kmまでの住民が不快を示しているという。

またアマンダ・ハリー氏によれば、イギリスでも風車から1.6km先で被害者が出ている。