次に、年齢を10 歳未満、8 歳未満あるいは6 歳未満に限定した場合の「寝室の磁界レベル」のリスクを解析した(表6)。
表4の高暴露群の個人別プロフィールからも明らかなように、10 歳未満あるいは8 歳未満に制限した場合には、0.4μT 以上のリスクは大きく上昇し、調整オッズ比はそれぞれ4.32 (1.00-18.7)および7.25 (1.36-38.5)と、全年齢群に比較して大きくなり、統計的にも有意となった。
若年者においてリスクが大きいことは、カナダやドイツの先行研究でも指摘されており、若年者では屋内の磁界に暴露される時間が長いことや若年者では磁界に感受性が高い可能性などを示唆している可能性を示唆しているのかも知れない。
また、男女別の解析では、男子でリスクが高く、50Hz と60Hz の地域別では、50Hz の地域でのリスクが高い傾向を示したが、これらの傾向の意義については、高曝露群が少なかった本調査の結果のみから判断するのは困難である。さらに、居住期間(%)を限定した解析を試みたが、居住期間(%)が10%以上で「寝室の磁界レベル」が0.4 μT の調整オッズ比は最大となり、さらに20 %以上あるいは40 %以上ではオッズ比はやや小さくなるものの、ほとんど変化しないが、60 %以上では低下し、80 % 以上では0.4 μT 以上の区分に症例は残るが、対照がいなくなった。
居住期間(%)を限定した場合にオッズ比が大きくなる傾向が見られることは、本研究における磁界暴露推定法の安定性を示していると考えられる。
ここでは、磁界暴露を[「寝室の磁界レベル」X(診断までの居住期間)]と見なしているからである。
潜在的交絡因子が小児白血病(ALL+AML)のリスクに影響するかどうかをいくつか検討した結果を表7に示した。潜在的交絡因子を投入したいずれのモデルにおいても、上記リスクに大きく影響しているものは見られなかった。
また、室内ラドンおよびベンゼン濃度の分布については、いずれも症例-対照間で差異は見られなかった(添付資料中の比較データを参照されたい)。
また、ALL に対する0.4 μT 以上の「寝室の磁界レベル」のリスクに対する同じ潜在的交絡因子の影響を調べてみたが、結果は同様に、同リスクはほとんど変化を示さなかった。
したがって、これらの交絡因子の影響はあってもきわめて小さいことが示唆された。