「出典」APEC 環境技術交流バーチャルセンター
http://www.apec-vc.or.jp/j/
・子どもの健康と室内の空気汚染対策
広瀬 恢 株式会社日吉技術部
住まいは厳しい寒さや風雨から、外敵から人を守る安全なシェルターであり、一家団欒のひと時を提供する憩いの場であった。
健康、安全、安心、快適は住宅という空間環境には欠かせない要素である。
住宅が木と土を材料として作られていた時代は、住まいは病気を癒し、体力を回復させ、健康を保持、向上させる場所であると信じられていた。
そのことは合成された化学物質による製品、新建材が出現しても変わらなかったのであるが、近年、その確信が揺らいできた。
住まいの空気が原因で発症する健康被害、シックハウス症候群(SHS)が社会問題になってきたのである。
SHSは新築や改装に伴い放散される化学物質やダニ、カビなどの微生物によって引き起こされるといわれているが、特に建材や壁クロス、家具などから放散される、例えば接着剤由来のホルムアルデヒド、トルエン等の化学物質によって汚染された室内空気汚染による影響が注目されている。
SHSの診断基準は未だ作成されていないが、いくつかの定義が提案されている。
その定義によって差異はあるが、SHSの罹患率は数%以上と推定されている。
平成15年に新築住宅に対するホルムアルデヒド放散建材の使用規制、24時間換気設備の設置とクロルピリフォスの使用禁止を規定した改正建築基準法が施行され、その後の新築住宅においては、ホルムアルデヒド濃度は激減している。
これによって、確かにシックハウス対策は前進した。
しかしながら、最近は代替製品の使用に伴う未規制物質の濃度の増加が報告されており、その健康影響が気がかりである。