・化学的、生物学的性質
金属は銀白色で、切断する際に発火しやすい。
表面は空気中で酸化されやすく、水とも反応する。
塩酸にはすみやかに溶けるが、時には黒色の不溶物が残る。
硝酸に溶解すると、硝酸ウラニル(UO2(NO3)2)の溶液となる。
原子価が4価と6価の化合物が重要である。
4価のウラン化合物の二酸化ウラン(UO2)は高温にも耐え、核燃料に用いられる。
金属ウランおよび他の化合物を空気中で加熱すると八酸化三ウラン(U3O8)が生じる。
特徴のある6価のウラン化合物に六フッ化ウラン(UF6)がある。
固体(融点64゚C)ではあるが、気体になる唯一のウラン化合物であり、ウランの同位体分離に利用される。
酸性水溶液中では4価ウランイオン(U4+、緑色)が安定に存在できるが、6価のウランは中性あるいは酸性溶液中で酸素が結合したウラニルイオン(UO22+、黄色)として存在する。
4価ウランイオンは、空気中の酸素の作用によって酸化されてウラニルイオンになりやすい。
塩基性では4価、6価の化合物ともに加水分解して沈殿するが、ウラニルイオンは炭酸イオン(CO32-)が十分にあるとウラニル炭酸イオン(UO2(CO3)34-)となって溶ける。
体内に取り込まれた時の挙動はどのような化合物かによって異なる。その結果として、健康に対する影響の評価は簡単ではない。
体内に入った大部分はすみやかに排出されるが、一部は体内に残る。
成人の体内の元素の量は、骨の中にある0.060㎎を含めて0.090㎎で、1日の摂取量は0.01mgである。
生体に対する影響
アルファ線による内部被曝が問題となる。
同じ放射能強度のウラン-238を摂取しても、化合物の種類と吸入か経口かの区別によって予想される被曝線量は大きく異なる。
不溶性の二酸化ウランの10,000ベクレル(ウラン量、0.8g)を吸入した時の実効線量は57ミリシーベルト、経口摂取した時の線量は0.076ミリシーベルトになる。
発射された劣化ウラン弾が鋼板を通過した時に生じる酸化物を摂取しても二酸化ウランの場合と同じ線量になると考えられる。
可溶性の硝酸ウラニルの10,000ベクレルを吸入した時の実効線量は5.8ミリシーベルト、経口摂取した時は0.44ミリシーベルトになる。
精製したウランから放出されるガンマ線の強度は低いが、ウラン鉱物からの線量は低くない。
1kgのピッチブレンド(ウラン量、0.7kg)が1mの距離にあると、1年に18ミリシーベルトの外部被曝を受ける。天然物であっても、ふつうの場所には置けない。
ウランについては、1g以上を摂取した時の健康影響が問題なので、放射線被曝の影響とともに化学的毒性も考慮すべきであるが、現在のところ決定的なことはいい難い。
放射能の測定
化学的に分離した試料のアルファ線を測定によって同位体の量が決定できるし、ICP質量分析によっても目的が達成できる。
各々の方法に特徴があり、相補う形になっている。
岩石などの天然物試料では、ラジウム-226の崩壊生成物から放出されるガンマ線のゲルマニウム半導体検出器による測定も役立つ。
体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。
放射線エネルギー(100万電子ボルト) アルファ線,4.21 (77%), 4.15 (23%)
比放射能(ベクレル/g) 1.24×104
排気中又は空気中濃度限度(六フッ化ウラン、フッ化ウラニル、硝酸ウラニル等の六価の化合物、ベクレル/cm3) 3×10-7
排液中又は排水中濃度限度(二酸化ウラン、 八酸化三ウラン、四フッ化ウラン等の四価の化合物、ベクレル/cm3) 2×10-2
吸入摂取した場合の実効線量係数(六フッ化ウラン、フッ化ウラニル、硝酸ウラニル等の六価の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 5.8×10-4
吸入摂取した場合の実効線量係数(二酸化ウラン、 八酸化三ウラン等の不溶性の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 5.7×10-3
経口摂取した場合の実効線量係数(二酸化ウラン、八酸化三ウラン、四フッ化ウラン等の四価の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 7.6×10-6
経口摂取した場合の実効線量係数(四価のウラン化合物以外の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 4.4×10-5
《古川路明》
runより:最も悪名高いウランですが、自然界にしか存在しなく量も非常に少ない事が分かります。
そして人体への影響も大きい事が分かります。