・Q2.20 薬物性の便秘とはどのような便秘ですか
薬剤の中には、消化管の運動を抑制するなど、便秘を引き起こす副作用をもつものも多く、薬物性の便秘は日常診療においてしばしば遭遇するものです。
高齢者においては複数の薬剤を服用しているケースも多く、身体的要因のほか、ますます便秘を重症化させる要因となります。
また、下剤の長期服用がかえって便秘を招来することがあります。
これは、長期間便秘に悩んで下剤や浣腸を使用し続け、それが習慣性となって大腸粘膜の刺激感受性が鈍り、低カリウム血症を起こし、腸の緊張、運動の低下を引き起こすために起こる現象です。
便秘を起こしやすい薬剤
1. 抗コリン剤
2. 制酸剤(アルミニウム、カルシウム化合物)
3. モルヒネ剤
4. フェノチアジン系薬剤
5. 三環系抗うつ剤
6. 抗パーキンソン剤
7. 降圧剤
8. 利尿剤
9. 筋弛緩剤
Q2.21 下剤を連用するとますます便秘を誘発するといいますが、それはなぜですか?
慢性便秘の人は、下剤を長期にわたって服用するケースが多く、その結果、その多くが、いつのまにか下剤の用量が増加している傾向になります。
この原因としては、服用量の調節が適切に行われていないことにあります。
下剤は、適用量より多量に使われると腸管は痙攣を起こし、逆に排便が不十分になります。
そして、さらに増量して下痢を起こすようになります。
このことから、患者は下剤を服用すれば下痢を起こすのは当然と考えて、ますます連用する結果を生み、下痢便が続くと、腸内容が全くないのに常時便意を感じるようになります。
これは、結腸、直腸が下剤によって刺激されて起こる炎症に基づくものであり、特に※アントラキノン系下剤の長期投与の結果多く見られます。
このような下剤の連用によって起こる症状は、下剤性結腸症候群(cathartic colon syndrome)と呼ばれています。
この発症機序には、カリウムの減少が大きく影響しています。
また、水分とナトリウムの喪失の亢進は、アルドステロンの分泌を亢進し、これが、さらにカリウム欠乏をもたらす結果となります。
また、尿細管障害を伴うこともあります。カリウムの欠乏は、筋力の低下、さらに腸緊張の減退、運動の低下を起こし、これが便秘を増強させるという悪循環を起こします。
下剤性結腸症候群はしばしば精神的因子が関与するので、この点も十分考慮して下剤を徐々に減量して、さらには離脱させるように指導することが重要です。