社説:放射能と健康 追跡調査を早く丁寧に7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・日本のルールが変わった
 そう考えれば、政府が「ただちに人体に影響はない」と繰り返し、晩発性障害についてまったく触れない理由も浮かび上がってくる。

あらかじめ「後の人体への影響」について封印してしまうことは、将来の補償やそれにまつわる訴訟に予防線を張ることになるのである。

「将来的に影響がないとまでは言っていない」とシラを切られれば、たとえがんになったとしても、それが福島第一原発の事故による放射能汚染の影響だと立証するのは極めて難しいからだ。

 労災問題に詳しい医師で、T&Jメディカル・ソリューションズ代表の木村知氏が語る。

「原発の現場で処理に当たられている作業員の方に、将来、健康被害が生じた場合、果たして適切な補償が受けられるのか、非常に憂慮しています。

今後、放射線の影響がどう出るかわかりませんが、因果関係がわかるのは小児の甲状腺がんくらいで、あとは何らかの健康被害が出ても、放射線の影響と証明するのは難しいでしょう。

 ですから、国は少なくとも作業員の方々には、普段の健康診断にかかる費用も含めて補償する態勢にすべきだと思います。

また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる方も少なくないと思われるので、心のケアも重要になってくると考えています」

 東電の勝俣恒久会長は3月30日の会見で、損害賠償や復旧費用について、「(資金が)いくらあっても足りない。

政府と協議しながら何とか資金不足に陥らないようにしたい」と漏らしていたが、原発周辺地域の住民、企業、さらには野菜の出荷制限を受けた農家への賠償などを考えると3兆~5兆円、場合によってはそれ以上に及ぶという見方が政府内にも流れている。

木村氏が言うように作業員に限ったとしても、長期的補償は難しいだろう。

 こうなった以上、自分の身は自分で守るしかない。

政府は、これまで年間100ミリシーベルトが上限だった作業員の緊急時被曝線量を、今回の事故を受けて250ミリシーベルトまで上げた。

食品に含まれる放射線量の暫定基準値にしても、もともとが厳しかったという理由で引き上げる動きさえある。

しかし、事態が悪化したからといって上限を上げるのは本末転倒である。

 前出の安斎氏も次のように批判する。
「私は今、福島第一原発2号機では燃料がすでに溶け、原子炉の下部に蓄積しているのではないかと見ています。

そんな安定にはほど遠い段階で、安易に基準値を上げるような『規制緩和』は絶対にやるべきではありません」

 現在、政府は原発から20km~30km圏内の屋内退避勧告を出していた地域の住民に対しても、自主的に避難するよう求めている。

この「自主的に」というところがポイントで、避難区域を拡大すればそれだけ賠償額も増える。これは被曝線量の上限を上げるのとは訳が違う。

長期的な経済低迷が明らかな日本にとって、国としても、ない袖は振れない。

 子ども手当や高速道路の無料化など、バラ撒き方式の政策で人気取りをしてきた民主党だが、すでに子ども手当の増額は諦め、高速道路無料化も復興財源確保のために白紙に戻す検討が行われている。

 今回の事故を機に、日本という国のルールは大きく変わった。

国家を存続させるために、個人個人の長期的な健康までは面倒を見ない。

そのルールのもとで生き残るには、政府の言葉のウラを読むことが求められている。


runより:結局この論説はほぼ当たりましたね。