・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html
・ニュースレター第63号 (2010年6月発行)
欧州が化学物質の複合影響に取り組む(前篇)
●欧州はなぜ複合影響に取り組みはじめたのか?
ここ数年来、EUが化学物質の複合影響の評価に対する新たな取り組みを始めています。
現在のEUの法規制では、化学物質の健康や環境に対するリスク評価は、原則として一つ一つの化学物質が単独で及ぼす影響を見ることになっています。そこでは、複数の化学物質が干渉することはそもそも想定されていません。
しかし、私たちが生活している日常の環境を振り返ってみてください。
私たちは、空気、水、土壌、食物、薬品、化粧品や洗剤、その他の家庭用品など、日々様々な化学物質に曝露しています。
個々の化学物質に単独で曝露するというよりも、様々な化学物質が混じり合った状態で曝されていると考える方が自然です。
そして、たとえ単独では影響がないと評価されていたとしても、複数の化学物質が組み合わさることによって人体や環境に影響を与えるおそれがあることが懸念されています。
そこで、欧州環境大臣理事会は、2009年12月22日に「化学物質の複合影響に関する結論(Conclusion onthe Combination Effects on Chemicals)」を採択し、欧州委員会に対して、既存の法律がこの問題に対してどのように対応しているかを評価し、法規制の改正とガイドラインを提案するよう要請しました。
●NGOの反応
欧州委員会が複合影響に対する取り組みを始めたことについて、グリーNGO団体はおおむね歓迎しましたが、複合曝露を減らすためにただちに行動を起こさないことについては遺憾の意を表明しました。
NGO団体は「様々な発生源からの有害な化学物質への曝露を減らすためには、緊急の措置を講じることと、より安全な代替物に置き換えていくことが必要」であると述べ、欧州委員会に対して、既存のEU法、特にREACHの下で化学物質の複合影響に対処するための法改正をすべきと強く促しました。
●混合毒性に関する報告書
欧州理事会の採択に関連して、2009年に研究報告書『State of the Art Report on Mixtures Toxicity(混合毒性の科学的技術の現状に関する報告書)』が発表されました。
この報告書は、内分泌かく乱化学物質の専門家であるAndreas Kortenkampロンドン大学薬学部毒性学センター所長の監修のもとで作成されたものです。
この報告書の主な目的は、混合毒性学に関する科学的論文や学術研究を分析すること、EUにおける混合毒性評価に関するリスク評価のレジームを分析し、混合毒性評価の実際の経験・取り組み・方法について分析すること、アメリカや日本、国際機関での混合毒性評価の取り組みを分析することです。
報告書は、全部で300頁以上に及びます。今回は、その中の「混合毒性学の科学技術の現状」の前半の一部を以下で簡単にご紹介します。
●混合毒性学の科学技術の現状
ここ十数年来、混合毒性学は目覚ましい発展を遂げてきました。
最近では、かなりの数の研究が複数の化学物質を混合するようになってきました。
特に、生体毒性学は混合毒性学の発展に重要な役割を担ってきました。
人類やその他の生物は、複数のミックスされた化学物質に日々曝されています。
にもかかわらず、化学物質のリスク評価は、これまで単体の化学物質の影響を個別的に評価することにとどまっていました。
しかし、化学物質は混合すると、化学物質単体の場合よりも影響が大きくなる場合があることがわかっています。
混合毒性学の分野では、従来の化学物質ごとのアプローチは単純すぎるという見解で一致しています。
科学技術の発展により、人毒性と生体毒性の混合リスク評価は十分可能になっています。(次号では、報告書の後半について主にご紹介します)
(報告:SA)
runより:残念ながら後半はまだ未発表です。
しかしこの文だけでも十分通用すると思い掲載しました。