ナノの話(3) 労働者の安全確保4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・5.労働安全衛生法下でのナノ管理の問題

5.1 厚労省報告書の指摘
 前述の厚労省報告書は次のように指摘しています。

新しく開発されたナノマテリアルが既存の化学物質からなるナノサイズのものである場合、現行の労働安全衛生法では化学物質の形状や大きさに着目して化学物質を区分していないので、ナノサイズのものであっても、あくまでも既存化学物質として取り扱われ、労働安全衛生法第57条の3に基づく届出の対象とはならない。
物質がナノサイズになるとナノ特有の性質を示すことが知られており、生体影響についても従来とは異なる可能性があることから、現行のナノマテリアルの取扱いについては検討の余地がある。
5.2 サイズは新規化学物質の要件ではない
(1) 厚労省報告書の指摘は重要
 現行の労働安全衛生法(安衛法)の下ではカーボン・ナノチューブ、二酸化チタン、酸化亜鉛、銀、鉄など、「既存化学物質」からなるナノ物質についても有害性が報告されているのに、労働安全衛生法第57条の3に基づく、新規化学物質としての届出と有害性の調査の実施が求められません。
 化審法においても同様に、「既存化学物質」と定義されるナノ物質は新たな届出/審査が求められません。これはナノ物質の可能性ある有害性から人の健康と環境を守る上で大きな問題であり、21世紀の新規技術を管理できない現行法体系の大きな欠陥です。

(2)安衛法と化審法の既存化学物質
 化審法と安衛法では既存化学物質を下記のように定義しており、既存化学物質でないものが基本的に新規化学物となります。
■安衛法の既存化学物質の定義
(1) 政令で定める既存化学物質
▼元素(一種類の原子で同位体の区別を問わない )
▼天然に産出される化学物質
▼放射性物質
▼公表化学物質(昭和54年6月29 日までに製造、輸入された物質)
(2) 厚生労働大臣が名称を公表した新規化学物質
(3) 既存化学物質扱いとなる特定の化学物質(昭和54年3月23日付け基発第132号)
■化審法の既存化学物質の定義
▼既存化学物質名簿に記載の化学物質(昭和48年10月16日)
▼白公示化学物質(法第4条第3項に基づき公示された物質)
▼化審法規制物質(第1種、第2種特定化学物質、指定化学物質)

6.提案

 ナノ物質は全て新規化学物質として管理の対象とする。
 安衛法及び化審法の下でナノ物質を管理する場合、すでに市場に出ているナノ物質を含んで、全てのナノ物質は新規化学物質と同様に扱い、製造量に関わらず、データの提出と安全性の審査を受けることを義務付けることを提案します。
 当研究会では全てのナノ物質を一元的・包括的に管理する「ナノ物質管理法」を提案しています。
(安間武)