・4.ナノ銀の規制
4.1 規制に関わる問題
ナノ物質の安全管理に関わる主要な問題には、健康及び環境に与える影響に関するデータが欠如していること、法的規制がなく、安全性が確認されずにナノ製品が市場に出ていること、有害影響を監視するために必要な技術と仕組みが開発されていないことなどが、世界共通の問題です。
一方消費者側から見ると、製品へのナノに関する表示義務がないために、どの製品にどのようなナノ物質が使用されているのか、それはどこで作られているのか、潜在的なリスクは何なのかなど、ナノ物質やナノ物質を含んだ製品に関する情報をほとんど入手することができないという問題があります。
しかし、上記の問題を含めてもっと包括的なナノ物質の規制と統合的管理に関する議論は別の機会に行うので、ここではナノ銀に関わる規制の問題に限定して考察します。
現在、ナノ銀について規制している国は世界中どこにもありませんが、アメリカではナノ銀に関連する製品について熱い議論が行われているので、ここではアメリカでの議論を紹介します。
4.2 ワシントン・ポスト紙の報道
2006年11月23日付けワシントン・ポスト紙は、米環境保護庁(EPA)は予測できない環境リスクを及ぼすかもしれないナノ銀を使用した広範な消費者製品を規制することを決定したと報道しました。
大量のナノ銀が環境中に放出され有益なバクテリアや水生微生物を殺し、また人間にもリスクを及ぼすことを懸念していた専門家や環境NGOsはこの報道に大きな期待を寄せました。
同紙によれば、EPAの新たな決定は、"ナノ銀の放出又は関連技術により細菌を殺すと主張する製品を市場に出したいと望む会社は、その製品が環境リスクを及ぼさないという科学的証拠をまず出さなくてはならないが、最終的な規則は数か月以内に連邦官報で告知される。
また、EPAの監視は殺菌剤であると広告している製品だけに適用される"としています。