・3.2健康でない皮膚からの浸透の懸念
日焼け止めのナノ粒子が、ヒトの皮膚を浸透して、体内に入り込むかどうかについて議論があります。
化粧品団体は(健康な)皮膚からは浸透しないと主張しますが、日焼け、発疹、かぶれ、ニキビなど損傷を受けた健康ではない皮膚からの浸透については言及していません。
一般的には、健康ではない皮膚からは浸透する可能性があると言われていますが、皮膚浸透に関する研究自体が少ないようです。
例えば、ナノ情報を提供するイギリスのウェブサイトNanowerkは、"生体での実験は、ナノ粒子が健康な上層皮膚バリアを浸透できるかどうかの疑問にはほとんど答えておらず、日焼けで損傷を受けた皮膚を浸透するかどうかの確認もなされていない。
マウスモデルを用いたナノ粒子の浸透に関する研究によれば、商業的に入手可能なクオンタムドット・ナノ粒子は、健康な肌に比べて、紫外線でダメージを受けた肌で、より容易に浸透するということを示した"と述べています。
英国王立協会・王立工学アカデミーが2004年に発表した勧告の中で、"二酸化チタンのナノ粒子は皮膚を通過しないことを示すいくつかの証拠があるが、同じ結論が太陽光で損傷を受けた皮膚や湿疹など普通にある疾病を持つ人々に当てはまるかどうか明確ではない。
化粧品に用いられている他のナノ粒子 (酸化亜鉛など) が皮膚を通過するかどうかについて十分な情報がなく、これについてはもっと研究が必要である。
これらの成分の安全性に関連する情報の多くは産業側の実施によって得られたもので、科学論文として公開されていない"と述べています。
欧州委員会/消費者製品科学委員会(EC/SCCP)が2007年に発表した意見によれば、"従来のリスク評価においては、皮膚浸透研究は健康な又は損なわれていない皮膚を用いて実施されている。
損なわれた皮膚の場合には、摂取が強まる可能性があるので安全域(MoS)でカバーされるよう考慮される。
しかし、ナノ物質のリスク評価においては、従来の安全域は適切ではないかもしれない。
もし活性な組織に対する全身的吸収があるなら、皮膚から全身的循環への急速な展開をもたらすかもしれない。
どのような全身的吸収も異常な皮膚状態(例えば日焼け、アトピー、湿疹、乾癬)でより多く起こりそうであるということが予測される"と述べています。