・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・質疑応答から
安間武/上田昌文/参加者
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Q: カーボンナノチューブのリスクについて、もう少し聞きたい。
安間: 2008年2月に国立医薬品食品衛生研究所のグループが、マウスの腹腔内への投与によって中皮種の前兆の病変が発現するという研究結果を発表した。同年5月には英エジンバラ大学でも同様な研究報告があった。
この結果については、暴露経路が吸入ではない等の批判をする向きもあるが、長くて細いカーボンナノチューブの形状がアスベストに似ていることから予測された結果であり、やはり危険性があるとする考えが世界の大勢である。
Q: ナノ食品のリスクについて聞きたい。
上田: リスクをどうとらえていくかという一番最初の段階の研究が、食品安全委員会で始まったところ。
その一部の報告がまもなく出てくる段階である。
食べ物に入っているナノ物質が、体の中でどこに行ってどんな風に消化吸収されるのかということが分からないと、リスクは評価できない。
食品の場合は、他の化学物質のようにある成分に特化して動物実験をしていくというのではなくて、ナノ化した食品(特に健康食品)に何か副作用的なものが出てきた時に、あるいは出そうな時に、それを集中的に調べる方法が現実的ではないかと思う。
Q: 食品を消化吸収してしまえば、ナノもそれ以外もみんな同じになるのではないか?
上田: ナノ食品の研究者の多くが、既存の食品をナノ化したからといって消化してしまえばナノサイズになるから同じではないかと考えている。
しかし、サイズを小さくするだけではなくて、カプセルの中に入れたり、特殊な加工をしているので、それがどういう影響があるのかは分からない。色々調べなければならないと思う。
Q: 以前、医者にあなたは肝臓が悪いのだから、蚊取り線香のようなものはだめですよと言われた。
蚊も人間も同じ生物だからそうなのかと思った。
上田: 抗菌グッズなども同じ。腸内細菌や常在菌を殺すので、こういうものを頻繁に使うと影響があると思う。
Q: ナノの発展してきた歴史を知りたい。
安間: ファインマン博士が1959年に行った講演で物質を原子レベルの大きさで制御しデバイスとして使うという考えを発表した。
1989年、IBMの研究者らが、35の原子を操作して会社のロゴを描写した。軍需や産業に重要だという認識を持ったアメリカは、2000年に国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)を立ち上げて、本格的にナノを推進し始めた。
その後、環境・健康・安全の面からの議論が出てきた。
さらには、倫理的な面の議論もされるようになってきた。
2004年には英国王立協会が、ナノ技術の負の側面にも目を向けるべきだという報告書を出している。
Q: ナノの現象は技術が確立する以前からあったということか。消化・吸収の段階ではナノになるというように。
上田: 同じナノサイズでもなぜある物質が有害で、ある物質は有害でないのかについても、ナノの研究が進めばメカニズムがわかるだろう。
自然界にナノはいくらでもある。
ナノ技術をつくっていこうという発想のモデルは自然界にある。
安間: 脳の血流関門や胎盤をナノのあるものが通過することが実験で分かっている。
この場合はナノサイズであることが問題となる。
ナノサイズのものは昔から自然界にもあるから問題ないという主張があるが、我々が問題にしているのは今までなかったもの、意図的につくり出されたものであり、人体も生物も環境も経験したことのないものである。