・東京衛研より
難燃剤はプラスチックや合成ゴム、繊維、紙などの素材を燃えにくくするための添加剤です。
難燃剤を化学物質の組成により分類すると、臭素系、リン系、塩素系、無機系に分かれます。
このうち、最も需要が多いのは無機系(約7万t)、次いで臭素系(約6万t)、リン系(約3万t)の順です。リン系の難燃剤については、化学物質過敏症との関連が疑われており、リン酸トリフェニル1)のように接触性アレルギーの原因となる物質や、リン酸トリス(2-クロロエチル) 2)のように発ガン性を有するものも含まれています。
そこで、健康安全研究センター(当時の都立衛生研究所)では、2000年7月~2001年3月に、東京都内の住宅(44軒、88室)、オフィスビル(22棟、44室)および外気(34ヵ所)で、空気中のリン系難燃剤濃度を調査しました3,4)。
下記に、実態調査結果の概要を示します。
11種類のリン系難燃剤を分析したところ、室内空気中からは10種類、外気からは7種類の物質が検出された。
これらのうち、濃度が高かったのは住宅ではリン酸トリブチル、オフィスビルではリン酸トリス(2-クロロイソプロピル)だった。
室内濃度と外気濃度とを比較すると、外気よりも室内の方が濃度が高い傾向がみられた。
住宅とオフィスビルの室内濃度を比較すると、住宅よりもオフィスビルの方が濃度が高い傾向がみられた。
室内濃度は室温と相関があり、室温が高くなるに従って、濃度も高くなる傾向がみられた。
表1.室内空気及び外気中のリン系難燃剤濃度 単位:ng/m3 物質名 住宅(n=88) オフィスビル(n=44) 外気(n=34)
最大値 最小値 中央値 最大値 最小値 中央値 最大値 最小値 中央値
リン酸トリメチル 5.8 <1.0 <1.0 99.7 <1.0 <1.0 1.2 <1.0 <1.0
リン酸トリエチル 212 <0.50 5.7 41.6 1.0 6.0 6.2 <0.50 0.57
リン酸トリプロピル 0.57 <0.50 <0.50 11.2 <0.50 <0.50 <0.50 <0.50 <0.50
リン酸トリブチル 396 0.78 7.1 77.1 <0.50 13.9 2.2 <0.50 0.53
リン酸トリス(2-クロロイソプロピル) 14,230 <1.0 4.2 171 1.8 14.9 26.9 <1.0 2.0
リン酸トリス(2-クロロエチル) 372 <1.0 4.6 553 <1.0 9.6 3.0 <1.0 <1.0
リン酸トリス(ブトキシエチル) 66.5 <1.0 2.6 218 <1.0 3.1 1.8 <1.0 <1.0
リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル) 100 <1.0 <1.0 212 <1.0 <1.0 <1.0 <1.0 <1.0
リン酸トリフェニル 15.1 <1.0 <1.0 13.5 <1.0 1.8 2.9 <1.0 <1.0
リン酸トリクレシル 9.2 <4.0 <4.0 5 <4.0 <4.0 <4.0 <4.0 <4.0
リン酸トリス(2-エチルヘキシル)は不検出(<1.0)
表2.室内空気及び外気中のリン系難燃剤検出率 物質名 住宅(n=88) オフィスビル(n=44) 外気(n=34)
検出数 (%) 検出数 (%) 検出数 (%)
リン酸トリメチル 21 23.9 9 20.5 1 2.9
リン酸トリエチル 85 96.6 44 100 19 55.9
リン酸トリプロピル 0 0 3 6.8 0 0
リン酸トリブチル 88 100 43 97.7 18 52.9
リン酸トリス(2-クロロイソプロピル) 74 84.1 44 100 20 58.8
リン酸トリス(2-クロロエチル) 76 86.4 41 93.2 13 38.2
リン酸トリス(ブトキシエチル) 64 72.7 37 84.1 4 11.8
リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル) 3 3.4 20 45.5 0 0
リン酸トリフェニル 28 31.8 21 72.7 2 5.9
リン酸トリクレシル 1 1.1 2 4.5 0 0