環境省の農薬管理マニュアル | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html


・環境省の農薬管理マニュアルが
集合住宅の管理会社等へ周知されました
有害化学物質から健康と暮らしを守る会・千葉 木村優子


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■7省庁へ要望書提出の経緯
 昨年10月、化学物質過敏症が病名登録され、更なる進展を求めてシンポジウムが開催されました(ピコ通信135号参照)。

私は、シンポジウムの実行委員および、要望書作成の世話人の一人として関わりました。
 シンポジウムには、全国各地から250人を超える発症者等が集まり、満場一致で宣言を採択しました。

その後、今まで横のつながりがなかったシンポジウム参加者が呼びかけで集まり、「やったね!病名登録記念シンポジウム宣言の要望を実現する会」を結成し、宣言で要望した「化学物質過敏症の社会的認知の推進」「根本的な化学物質対策についての法律の制定」などに基づき、要望書を作成し省庁との交渉を行いました。
 省庁への橋渡しは川田龍平参議院議員にお願いし、6月9日に7省庁(厚労省、経産省、農水省、環境省、国交省、文科省、消費者庁)と、参議院議員会館にて交渉の場を持つことが出来ました。
 要望書の内容は多岐に渡りました。農薬に関する問題のひとつとして、通知「住宅地等における農薬使用について」の法律化と罰則化を求めましたが、期待したような回答は得られませんでした。

しかし、その中でも周知に関しては各省庁から前向きな回答が得られましたので、報告させていただきます。

■機能していなかった通知やマニュアル
 反農薬東京グループとCS発症者との働きかけにより、H15年(2003年)農水省から通知「住宅地等における農薬使用について」が発出されました。

要旨は「住宅地等では農薬の飛散リスクを減らすために定期的散布は控え、害虫駆除は剪定や補殺などを優先すること。物理的防除を行ったが手に負えずやむを得ない場合はじめて、最小限の範囲を散布する」です。

環境省は本年5月31日、これまで暫定版だった「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」の正式版を公表し、住宅地通知の主旨を実現するための具体的な方法を紹介しています。

また、「化学物質に敏感な人が散布場所近隣に居住している場合、事前に対応について相談する」との記載もあります。

しかし現実には、通知もマニュアルも自治体や一般に、周知さえされていないのです。

■CS発症者の農薬をめぐる現状
 発症者は、農薬に曝露すると心臓発作、胸部圧迫感など、確実に健康被害を被ります。庭のバラや生垣への消毒、マンションや団地の共有緑地への散布など、住宅地でも頻繁に農薬散布は行われています。

発症者は、散布を行っている近隣やマンション・団地の管理組合や管理会社に対して、住宅地通知やマニュアルをお伝えし「農薬散布を止めて下さい」と、必死に訴えてきました。

しかし、食物の残留農薬ならばともかく、空気中に放出された農薬が、発症者に耐え難い苦しみをもたらすことの理解を得るのは非常に困難です。

そのため、農薬散布のストップには至らず、悲しいかな、身近な近隣住民や管理組合等とのぎくしゃくした関係だけが残るという事態に、全国各地の発症者が追い込まれています。

■国交省から民間の管理会社へ周知が実現
 マンション管理会社は、登録制で国交省の管轄下にあります。

今回の交渉で不動産業指導室が、管轄の社団法人高層住宅管理業協会を通じて、環境省のマニュアルを初めて民間のマンション管理会社に周知しました。

なおかつ、私たちが「不適切な散布を続けるマンションの管理会社に対して指導していただきたい」と求めたところ、不動産業指導室からは「管理会社にちゃんと参考にして下さいと、周知するのはやぶさかではない」との回答も得ております。
 後日、不動産業指導室の管轄は分譲マンションの管理会社のみであり、その他は管轄外で関連団体も無いため周知不可能ということが分かりました。

そこで、それぞれの住宅関連の団体を管轄するそれぞれの課を調べ、管轄下の団体に対してマニュアルの周知を求めました。

以下、周知が実現した団体です。
(財)住宅管理協会、(財)日本賃貸住宅管理協会、(社)全国賃貸住宅経営協会、(財)マンション管理センター。

UR(都市再生機構)は、既に周知済みでした。

高層住宅管理業協会に未加入の管理会社が10%ありますので、そこへどのように周知していくのか課題として残ります。

■農水省は、農地でなくとも取り締まると
 交渉の場で発症者の居住している2つのマンションの、散布事前告知チラシを事例として見せました。

2枚とも基準違反の高濃度希釈で、ディプテレックス750倍希釈(本来は樹木には1000倍以上)、トレボン1000倍希釈(本来は樹木には4000倍)です。すると、農薬対策室は、罰則がない住宅地においても、明らかな使用基準違反については、都道府県を通じてしっかり取り締まると明言しました。

■環境省は、マニュアルの出前講座します
 環境省農薬環境管理室は、6月に日本造園組合連合会の総会にて、製本したマニュアルを会員対象に4500部配布し、内容の説明をしました。

自治体や防除業者の団体にも、同様の出前講座を行うと回答しています。

■今後の課題など
 マニュアルの周知を受けた管理会社やURなどが、確実に末端の支店などへマニュアルを下ろしているのか、管理組合まで伝えているのか、皆さんそれぞれで確認していただきたいと思います。

また、交渉の場で発症者の生の声をぶつけたことで、省庁から得られたことをそれぞれが実践できればと願っています。

居住する自治体に対して、マニュアルの周知徹底を確認する、自治体に環境省の出前講座の開催を要望する、農薬散布が基準の希釈であるか確認する等。
 発症者たちが要望したことで、各省庁が前向きに動き出し、散布を止めてと言いやすい環境へ変化しつつあると思います。

しかし、散布による健康被害を無くすためには、住宅地通知に罰則を設けることが絶対に必要ですので今後も求めて行きます。