化学物質過敏症の発症者として2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・化学物質過敏症の発症者として、今伝えたいこと-2
玉腰了三 (CS発症者 神奈川県平塚市在住)

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 今日、お話したいことは、7点です。

これらはすべて私の個人的な体験にもとづく話ですから、その点を考慮してお聞き下さい。

1.化学物質過敏症の原因は、微量な物質(化学物質)の毒作用にある
 昨年の10月1日付けで、「ICD10対応標準病名マスター」に「化学物質過敏症」が登録されました。

日本の場合は、ICD10コードのT65.9 「その他及び詳細不明の物質の毒作用,詳細不明の物質の毒作用」に位置づけられました。

ちなみに日本で、ICD10コードT65.9に登録されている病名は、化学物質過敏症の他には、全身中毒症、中毒、毒物誤飲、 服毒自殺未遂の4つです。

このことからも、化学物質過敏症が「物質の毒作用」によるものだということがよくわかります。

このことは、端的に申し上げれば、この毒作用のある化学物質がなければ、人は化学物質過敏症にはならない、ということです。
 私は、現在では、日常的に二重の防毒マスク(VOC対応の防毒マスクと活性炭入りマスク2枚を重ねて使用)なしでは生活できません。

特に冬は、夜寝る時も外せません。近くのビニールハウスの加温機が、稼動して燃焼ガスを排出するからです。

加温機のメーカーのインターネット上のカタログにはこう書いてあります。「燃焼ガスは、人体や作物に非常に有害です。

必ず屋外に排出してください」と。非常に有害な燃焼ガスを屋外に排出していいのでしょうか。私にとって、冬の一番の恐怖はこの燃焼ガスです。

口の中が苦くなり、舌はしびれ、それと同時に内臓、主に消化器ですが、そこに「毒」を感じます。

目・鼻・喉、さらに脳や筋肉、関節にも症状が表われます。

その時の体調にもよりますが、やがて身体全体に強い倦怠感がおこり、横になってただ耐えるだけという状態になり、疲れきって寝てしまいます。
 れは、空気清浄機や防毒マスクがあっても、完全に防ぎきることは今のところできていません。

私の家がビニールハウスの風上になり、風が強い日などは、比較的安心ですが、逆に風下になるともう地獄です。

家から離れ、田んぼのあぜ道や山奥に逃げて車の中で寝ることもしばしばです。
 これは、ほんの一例です。

私にとって、現在の世界は、どこへ行っても、「toxic world」つまり「毒の世界」となっています。

ppm、ppbの世界の物質の毒性が、私の健康に大きな影響を与えています。

多くの化学物質に曝露し、日常的に次々と起こる体調不良はもはや単なる「アレルギー反応」だけでは説明できません。何人もの医師が私の症状に首をひねるだけでした。

化学物質の毒性に焦点をあてることなく、化学物質過敏症の本質を理解することは不可能だと思います。
 私は、一時の感情で「毒」(toxic effect)という言葉を使用してはいません。防毒マスクなしでは日常生活を送ることができない私は、「毒」(toxic effect)という言葉を、日常的な現象を普通に説明するために使っているだけです。

2.化学物質過敏症の現実は、複数の物質(化学物質)の複合的な毒作用の結果
 現代社会には、多くの化学物質があふれています。

もはや化学物質抜きの生活は考えられません。

当然そこには毒作用をもつ化学物質も多く存在していますが、現実の生活はそれらの複合汚染のなかで繰り広げられています。

複合的な「毒の世界」(toxic world)が、地球規模で広がっています。
 私は、海外の化学物質過敏症や環境病の発症者とインターネットで連絡をとりあっています。

発症者の悲痛な叫び、お互いを思いやる暖かい言葉、各国・地域での取り組みの状況、必要な情報などがネット上の世界を駆け巡っている現実があります。

3.化学物質過敏症は、他の環境病や発達障害などと切り離せない
 化学物質過敏症は、現実の問題としては、とくに「シックハウス症候群、アレルギー性疾患(喘息・アトピー・花粉症)、電磁波過敏症」などの環境病と切りはなすことができません。

なぜなら、化学物質過敏症の発症者には、アレルギー体質の人や電磁波過敏症をあわせもつ人が多いからです。
 発達障害はこの点では、少し視点を広げて考える必要はあります。

発達障害とは、高機能自閉症、広汎性発達障害、学習障害、ADHDなどですが、これらの発達障害の発症に化学物質が関与しているのではないか、という研究報告が多くなっているのも事実です。

4.化学物質過敏症の症状は、共通性はあるものの、一人ひとり違う。

それに伴う生活上の困難や障害も多様である
 「一人ひとりの症状を丁寧に理解する」、しかも「生活上の多様な困難や障害と関連させて理解する」ことの大切さを強調しておきたいと思います。

当然、症状と生活上の困難や障害は密接に結びついていますから、丁寧に一人ひとりに即してみていただきたいのです。

労働災害者認定や障害認定に際しても、生活上の諸困難を正確に反映させ、すみやかに認定されるようにしていただきたい。

5.発症者の生命と健康の維持、症状の軽減のために必要なことは、毒作用のある物質の曝露を避けること、つまり安全で安心できる居場所の確保を最優先すること
 化学物質過敏症の発症者にとって、毒作用のある物質の曝露を避けることが一番大切です。

安全な居場所の確保は、個人の力だけでは限界があります。多くの負担を軽減するためには、行政の援助がどうしても必要です。

また、有害な化学物質に関するあらゆる情報を、関係者や市民全体に正確に伝えることも重視すべきだと思います。

これは行政、民間問わず、身近な地域から、広くは地方、日本全体、地球全体を視野に入れて取り組む必要があります。

個人的には、花粉、黄砂、紫外線の予報と同じように、気象予報で大気汚染予報も日常的に扱ってほしいと思っています。

こうした情報があれば、予防対策ができるからです。

6.私たちを襲う、恐ろしいほどの孤立感、不安と恐怖、無力感
 これは、外国の化学物質過敏症の発症者も、私たちと同じように苦しみ、悩んでいる、とても深刻で、重要な問題の一つです。

発症者の中には、絶望のあまり、自殺する人が今なお後を絶ちません。家族を含め、まわりの人に理解してもらえないとき、私たちは強い孤独感、孤立感を味わいます。

ずっと続く体調不良、いつまた同じ苦しみが襲ってくるか分からない不安と恐怖、社会参加から閉ざされ、最後に残る無力感と絶望感、これらを乗り
越えるためには、仲間同士の励ましあいとともに、関係者や地域の人、社会全体の理解がどうしても必要です。

 毒性の強い化学物質に曝露した時、私もイライラしたり、短気になったり、とにかく機嫌が悪くなります。

とてもニコニコしていられないのです。

不幸なことは、このような発症者の二次的症状としての振る舞いや言動を、化学物質の毒作用の結果としてではなく、発症者個人の「心」の問題として扱ってしまうことです。

こうした本末転倒が、現実に、今も起こっていることを私たちは直視しなければなりません。
 このような不幸が起こらないようにするためには、化学物質過敏症についての正確な理解を広め、自己肯定感や自己評価が低くなっている発症者が、安全かつ自由に安心して生活できるようにし、さらに自尊心をもって社会参加できるように支援することがとても大切だと思います。

7.ケミネットの「化学物質政策基本法」における8つの基本理念の尊重
 以下に挙げた基本理念はどれも大切です。

そして、このような総合的な基本理念に基づく総合的な化学物質政策の策定と実現過程の中でこそ、「化学物質過敏症」に関する諸問題の抜本的な解決も可能となるのではないでしょうか。
①持続可能な社会のための化学物質の製造使用(化学物質の総量削減)
②ノーデータ・ノーマーケットの原則
③影響を受けやすい人々(胎児・子供など)や生態系への配慮
④ライフサイクル管理(研究開発から、製造、使用、リサイクル、廃棄処分に至るまで)
⑤予防原則
⑥代替原則
⑦すべての関係者の参加
⑧国際的協調

以上で私の発言とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(ケミネット/化学物質政策を考える連続学習会(2010.2.22)での発言をもとに加筆修正したものです。(玉腰))