・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・化学物質過敏症の発症者として、今伝えたいこと-1
(CS発症者/CS児童の親)
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私は、約10年前に当時住んでいた団地で、斜め上の部屋の漏水と結露によって傷んだ壁の補修や塗装がきっかけで、化学物質過敏症を発症しました。私が発症してからは、生活全般に渡って有害なものに曝露しないよう心がけて生活していましたが、3人の子どものうち、長女だけが約3年前に小学校の書道で使用する墨汁がきっかけで発症してしまいました。
はワックスを塗布しない、換気をする、農薬散布を行わないなどの学校の様々な対応のおかげで頭痛などの多少の症状はありますが、現在はほとんど休むことなく通学しています。
本日は、CS発症者の母親として、特に、殺虫剤の散布による被害についてお話したいと思います。
1.「住宅地等における農薬使用について」に罰則規定を
2年前の夏休み、近隣市の大きな公園へ家族で出かけました。
入り口に入ったと同時に薬剤のにおいがし、おかしいと感じました。
しばらくすると、長女に頭痛が始まり、体調が悪くなりました。私自身も気分が悪くなりました。
公園内の職員に聞いてみると、その日の早朝、毛虫発生のため、農薬散布をしたとのこと、広い公園の中央にある事務所の裏手の人目につかないところに小さな張り紙で、農薬散布をしたことだけが掲示されていました。
そこには、何の薬剤を散布したかすら、書かれていませんでした。
私たちはすぐに公園を出て、帰宅しました。
楽しい夏休みの1日になるはずでしたが、散々な1日となってしまいました。
その公園は規模が大きく、夏休みということもあり、大勢の子どもたちが何も知らずに遊んでいました。
農薬散布をした場所も立ち入り制限がされているわけでもなく、散布された木の下で子どもたちが遊んでいるのです。
後で、その時、撒かれていたのがEUでは使用が禁止されている有機リン系殺虫剤だったと知りました。
この公園では、「住宅地等における農薬使用について」(農水省・環境省通知)や「公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル」(環境省)は全く守られていません。こういった事例はたくさんあります。
しかも、樹木等での薬剤散布による健康被害は、CS発症者だけのものではありません。
以前、小学校の通学路沿いの庭で、下校時刻直前に農薬が散布されたことがありました。
子どもたちの下校時に居合わせた父母の話によると、その家の前を通ると咳き込む子ども、気持ちが悪いと言って走り出す子が何人もいたそうです。
自宅周辺で散布された薬剤が原因で頭痛や吐き気がすると言っている人は、子どもを含め、私の周囲に何人もいます。
その人たちの症状は急性でしかも軽く、CS発症者と違い、散布場所から離れると症状が改善するため、公的機関に相談したりすることなくすんでしまいます。
しかし、間違いなく、数多くの健康被害は起こっているのです。
こういったことを防ぐためには、「住宅地等における農薬使用について」通知が今以上に周知徹底されなければいけません。そのためには、通知に違反した場合には罰則を伴うようにするべきではないでしょうか。
「化学物質政策基本法」の制定も大事ですが、まずは、私たちの身近にある問題からひとつずつ解決していただきたいと思います。
2.建築物衛生法の周知徹底を
問題は、公園等の屋外だけではありません。
公共施設内でも薬剤は使用されています。
やはり、一昨年のことになりますが、近くの図書館へ行ったところ、その時も入ったとたん嫌な感じがしました。
娘も変なにおいがすると言ってすぐに図書館を出ました。自宅に帰ったところ、娘は鼻血が止まらなくなり、これはおかしいと思い、図書館へ問い合わせをしましたが、電話口の職員は薬剤散布を行っていないと言いました。
しかし、昨年7月に市のHPで公表された市内の農薬・殺虫剤等の使用状況では、その図書館で有機リン系殺虫剤が使用されていたのです。
私が問い合わせをした際の職員が薬剤使用を知らなかったのか、知っていて否定したのかわかりませんが、いずれにしても問題があると思います。
図書館は、幼児や児童も頻繁に利用する施設です。そういう施設内で、PRTR法第1種に指定されているような危険な薬剤を使用していいものでしょうか。
しかも、これは、私の住む市の一図書館だけの問題ではありません。昨年、私が参加している「有害物質から子どもの健康を守る千葉県ネットワーク」では、千葉県内の22市に使用している化学物質についてのアンケートを行い、現在集計中です。
これを見ると、多くの市で、公民館や保育園などに年2回ずつ有機リン系殺虫剤が散布されており、利用者への告知がない場合も多々あります。
公民館も幼児を含む多くの市民が利用する場であり、保育園は乳幼児が生活する場所です。
03年に改定された建築物衛生法では、生息調査が義務付けられています。それにもかかわらず、毎年、施設全体に年2回ずつ定期的に同量を散布するといった漫然とした薬剤の使用が続くと子どもたちの健康はどうやって守っていけばよいのでしょうか。
建築物衛生法の周知徹底、IPMによる防除の徹底が必要ではないでしょうか。
3.今後に向けて
問題は、先ほど述べた薬剤散布だけではありません。現在すすめられている学校の耐震工事でも、たくさんの有害な化学物質が使用されています。
しかし、文科省の規制値はたった6物質です。
私の子どもたちが通う小学校の生徒の中には、小学校・中学校とあわせて5年間も工事が続く中、学校へ通うことになる学年があります。
しかも、たまたま、今朝、小学校の先生と話をしたのですが、つい先日工事が終わり、3月から使用予定の体育館へその先生が入ったところ、「結構新築臭がして臭かった」とおっしゃっていました。
この気温の低い季節に、健康な大人ですら臭くて気分が悪いと感じる所で、子どもたちは体育の授業や行事をするのです。
私の知人の子どもが通う別の小学校では、昨年夏に体育館の耐震工事が終了しています。
そのお子さんは体育館を使用するたびに、今でも「何となく気持ちが悪いんだよね」と言っていると言います。
このような影響を皆さんはどのようにお考えになりますか?
今の子どもたちは、その生を受けた瞬間からこれらの化学物質に曝露され続けています。しかも、その影響は、確実に子どもたちの体の中に忍び込んでいます。
娘の同級生の中に、ホームセンターへ行くと鼻水が止まらなくなる、家具屋へ行くと頭痛がすると言ってすぐに外へ出てしまう、自分の家の車が臭いと言って窓を開けないと乗れない、油性ペンを使うと気分が悪くなる、プールの塩素処理室の前で咳き込むといった症状を訴える子どもがいます。
これらはすべて別々の子どもです。
しかし、自分の子どもにこのような症状が少しくらいあっても、有害な化学物質が原因だと結びつけて考える親はほとんどいません。
化学物質過敏症というと、とても特別で、まれなものという見方をされている方が大半だからではないでしょうか。
この子どもたちが、現状のまま有害な化学物質に曝露され続けると、化学物質過敏症の発症リスクは限りなく大きくなります。
もっと発症者が増えてしまう前に、重症の方がこれ以上増える前に、早急に対策をとるべきではないでしょうか。