・9 月20日、私は生鮮食品の調達に出向いたコープぎふ芥見店で、強い香料を身にまとった婦人と行き交った。
一瞬の曝露で、意識消失、顔面蒼白、言語喪失、筋肉のこわばり、眼のかすみ等でその場にうずくまった。
それ以来、身体の過敏性が増し、微香で吐き気、胃のキリキリする痛み、唇・舌のピリピリ感に加え、気管支粘膜刺激、易疲労、脳の混乱・失語に悩まされている。
脳の嗅球(嗅覚を司る神経組織)が辺縁系(情動、意欲、記憶、自律神経活動に関与している)に近いところからこうしたことは起こりうると専門医から聞いてはいたが、突然わが身に起こると呆然とする。
いまや、香料曝露が恐怖。香料成分はただ事ではない。
とりわけ若い人たちが、濃厚な香料ベールで自身の呼吸器や皮膚粘膜を包んでいること、香料ベールに身を包むママに抱っこされた幼い子どもたちが危惧される。
香料曝露時の症状は、個人差があるが、MCS患者Fは次のように訴える。
呼吸が苦しい、頭痛、めまい、ふらつき、頻脈、胆のう痛、腹痛、下痢、眼の痛み、関節痛、疲労感、脱力感、無気力、思考力の低下、倦怠感、不整脈、動悸、息切れ、口腔、舌の痛み、眼のちかつき、吐き気、血圧低下、顔面紅潮、ひどいのぼせ、皮膚痒み、湿疹、耳の痒み、
・直後の苦痛 ・時間を経ての苦痛 ・他の化学物質への反応が極端に強くなる
・ひどい時はショック、中毒の症状を起こす
渡部和男氏の報告によれば、香料の数は4,000種を超す。個々の成分は香料としか記載する必要がない。
また、法令には、香料成分を直接規制する内容が見当たらない。
香料はアレルゲンとして作用することが多い。
この中には天然香料も含まれる。
児童の喘息罹患率は、近年増加し続け、5%に達している。
香料は喘息を誘発したり悪化させたりすることがあるため、患者は香料を避けるように勧められている。
時には、重症皮膚炎を招き死に至る例も報告されている。
香料には内分泌攪乱作用がある。
一部の合成ムスク(以後ムスクと言う)※は、産婦人科に関する障害を起こす可能性が指摘されている。香料の神経毒性も知られるようになった。
香料自体が変異原性や発癌性を持つ場合があり、他の物質の変異原性や発癌性を高めることもある。
ムスクは、細胞が外から入った異物を排出するメカニズムを妨害し、細胞内の毒物濃度を高める。
ムスクは血液脳関門を容易に通り、脳内に高濃度で残留し代謝も遅いため高齢者の血中ムスク濃度は高い。
香料添加の日用品はあふれており、ムスクは母乳中からも検出されている。ムスクは分解されにくく、下水処理場に入ったムスクの約3分の1が未分解のまま放出される。残りは汚泥に吸着されたと考えられている。
ムスクは、河川や海から、また幼稚園やアパートの空気中からも検出されており、感受性が強い未熟児や幼児、病人への影響が懸念される18。
※麝香(ムスク)は、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢(ジャコウ腺)から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種。ワシントン条約により商業目的の取引は原則として禁止された。
そのため、現在、香料用途としては合成香料である合成ムスクが用いられている。
今年の夏の終わり、当地は豪雨に見舞われた。降り始めてしばらく、道路に出ると辺り一面に香料臭が漂っていて驚いた。雨が大気中の香料成分を溶かしたのであろうか。
柔軟剤ダウニーが、地域や職場、学校、ネット上などで物議を醸している。柔軟剤の拡散と展着、幾重ものフリーザーバックさえすり抜ける通過性と浸透性に危機感を訴える人もいる。
「い~ぃ匂い」一見無邪気なそれは、生存に不可欠な空気を人為的に化学物質で汚染し、否応なく人の鼻腔に送り込む。
奇跡のように地球に誕生し、長い進化と適応の歴史を経た生命の仕組みに対する冒涜ではないか。
企業は、社会的責任を自覚すべきであり、国は、香料の氾濫に対し良識ある規制を設けることはできないか。
業界の喧伝に安易に乗じ、自らの身体をそうとは知らず汚染し障害している若い世代の姿は悲しい。環境意識と消費者教育の遅れを痛感する。
製造・販売者は、喘息発作誘導や内分泌攪乱作用など香料の毒性を示し、消費者に使用に際しての注意を促すべきであり、使用者は周りに配慮をすべきである。
「香料自粛」も、国民的合意に至るまで、禁煙と同じく膨大な犠牲と時間を要するのであろうか。
私たちには、過ちを繰り返している余裕はない。
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