・香料は化粧品、香水、整髪料、シャンプ-、制汗剤、消臭剤、柔軟剤、洗剤等に使われている。
使用の主な理由は、おしゃれ、汗臭さや加齢臭を消すためとある。
強い香りの米国製柔軟剤「ダウニー」の国内での出荷量は、この2、3年で急速に伸び、5年前の10倍以上に増えた。
近年、国内メーカーの柔軟剤も香りが強くなっており、ライオンは香料を増量、花王も香りが長期間持続するという商品を発売した。
柔軟剤の使用目的は、花王の調査によれば、「香りづけ」との回答が20代~30代で7割、40代~50代で5割を占める。香水・オーデコロン類の輸入量は、09年で約4,000 トンと、20年前の3倍以上に増え、香水を使う人の割合は08年、5~19歳の52%に上っている。
また、職場では緊張を和らげるためオレンジやユーカリの香りを、全日空では企業のブランドイメージを高めたいとして針葉樹の精油を、パーキングエリアでは、リフレッシュして事故を防ぎたいとオレンジの芳香を拡散するなどの動きが出てきた。
介護施設や病院、ホテルなどでも植物から抽出した精油の拡散が広がっている2。
一方、列車やマンションエレベーター、飛行機、レストラン、コンサート、教室等の密閉空間や地域の生活圏で香料に曝露し、気分が悪くなったり、吐き気、食欲が失せ、香料自粛を訴えている記事や投稿が多い。3
11歳と14歳の訴えもある。少年Nは、朝新聞を取りに降りる自宅マンションのエレベータ内で女性の化粧品の匂い、男性の香水で気持ちが悪くなり、匂いは少しだけにしてと訴えている4。
悪臭と芳香は紙一重である。
教師がつけていた化粧品の香料で意識を失ったことをきっかけに体調を崩した児童もいる5。
保護者からの配慮の求めに対し、学校は「教師の人権もあり、化粧品の禁止はできない」と応じているが、身体的弱者である児童の人権は誰が守るのか。学校で余分な化学物質に児童をさらすことは虐待に等しい。
加古川市の中学生は、誠意を欠く学校側の対応で、整髪剤、制汗剤等に曝され机に香水をかけられるなどの嫌がらせにあって以来寝たきりとなってしまった。
現在、学校側の安全配慮義務違反を問い、市に損害賠償を求めて提訴している6。
横浜国大教授らの調査によれば、化学物質過敏症患者の80%以上が発症を促す物として香料を挙げている7。
また専門医によれば、喘息患者は香水で発作が出たり息苦しくなることがあるという8。
ファミリーレストランで香水をふりかける若い女性、列車内で整髪しスプレー缶の整髪料をふりかける女性など、周囲の迷惑を顧みないモラル低下の風潮も香料使用に拍車をかけている9。
私たちは、日常的に「香料」という名の化学物質の暴力にさらされていると言える。