・症状 [編集]
集中困難・過活動・不注意などの症状が通常7歳までに確認されるが、過活動が顕著でない不注意優勢型の場合、幼少期には周囲が気付かない場合も多い。
年齢が上がるにつれて見かけ上の「多動」は減少するため、かつては子供だけの症状であり、成人になるにしたがって改善されると考えられていたが、近年は大人になっても残る可能性があると理解されている。
その場合は多動ではなく、感情的な衝動性や注意力や集中力の欠如が多い[1]。
遺伝的な要因もあるとされるため、症状は育て方や本人の努力で完治することはないとも言われている。
ただ、子供のADHDでさえ曖昧な点も多く、日常生活に支障をきたす精神的な特性を何でもかんでも障害に含めるべきではないとする意見も存在する。
成人にADHDを認めるべきかどうかは医師によって考え方がまちまちであるが、近年では認めないとする意見は少数派である。
ただし、近年の動向を知らずに「ADHDは子供だけの症状である」と考えている医師は少数ではない。
うつ病やPTSD、アスペルガー症候群でも類似の症状を呈する場合もしくは合併してしまう事もあり、正式にはADHDに理解の深い医師(日本に於いては極度に少数)により診断される必要がある。
診断 [編集]
現在、全世界で、最もよく使われている診断基準(特に統計調査)は、アメリカ精神医学協会が定めたDSM-IV(1994)とその改訂版のDSM-IV-TR(2000)のAD/HDであり、不注意優勢型と多動衝動性優勢型と、その混合型という3つのタイプに分けられる。
DSM-IVではMRIや血液検査等の生物学的データを診断項目にしていない。 1994年に改訂されたWHOの診断基準のICD-10は、ADHDではなく、「多動性障害(Hyperkinetic Disorder)」とされており、注意の障害と多動が基本的特徴で、この両者を診断の必要条件としている。
ICD-10の「多動性障害」は、細部では若干の違いがあるものの、DSM-IVのADHDの「混合型」に匹敵する。
疫学 [編集]
双生児での研究 [編集]
コロラド大学のジリス(Jacquelyn J. Gillis)らの研究では、ADHDを発症した一卵性双生児が二人とも発症するリスクは、ADHDを発症した一卵性ではない兄弟姉妹の場合の11倍 - 18倍になると報告された。
ノルウェーのオスロ大学のグヨーネ(Helene Gjone)とサンデット(Jon M. Sundet)、英国のサウサンプトン大学のスティーブンソン(Jim Stevenson)らの研究では、526組の一卵性双生児と389組の二卵性双生児を調べた結果として、最大で80%までADHDの遺伝的要因で説明できると発表した[1]。
てんかんとの関わり [編集]ADHDを持つ児童のうち約3割が脳波異常、特にてんかんに似た脳波を記録することが確認されている[4]。
原因 [編集]
原因は2007年現在、解明に向けて進んでいるがまだすべてが理解されてはいない。
遺伝的な要素が指摘され、一卵性双生児ではきわめて高い頻度で一致し、血縁者に共通してみられることも多い。
遺伝的な要素に様々な要因が加わり、症状を発現させる。抑制や自制に関する脳の神経回路が発達の段階で損なわれているという点までは、確からしいが、その特定の部位・機能が損なわれる機序は仮説の域を出ない[1]。