・ 強迫症状に付随するもの [編集]
強迫性障害は強迫症状によって構成されるが、個人差により、以下のような状態が付随することもある。
回避
強迫観念や強迫行為は患者を疲弊させるため、患者は強迫症状を引き起こすような状況を避けようとして、生活の幅を狭めることがある。
これを回避と呼ぶ。
重症になると家に引きこもったり、ごく狭い範囲でしか生活しなくなることがある。
回避は強迫行為同様に患者の社会生活を阻害し、仕事や学業を続けることを困難にしてしまう。
巻き込み
強迫行為が自分自身の行為で収まらず、家族や親しい友人に懇願したり強要したりする場合がある。
これを巻き込み、または巻き込み型という。
これにより、患者のみならず周囲も強迫症状の対応に疲れきってしまうことがある。
巻き込みのように、周囲が患者の強迫行為を手伝うこと(患者にかわって何かを洗ったり、誤りがないか確認するなどの行為)は患者の病状を維持したり、かえって悪化させることが明らかになっているため、極力避けなければならない[2]。
ただ、これを急にやめることは患者にとって苦痛が大きく、一時的に症状が悪化する場合があるため、患者と治療者や家族が必要性を話し合った上で、段階的に巻き込みをやめていく必要がある。
強迫性障害の特徴 [編集]人種や国籍、性別に関係無く発症する傾向にある。調査によると全人口の2%前後が強迫性障害であると推測されている。
20歳前後の青年期に発症する場合が多いといわれるが、幼少期、壮年期に発症する場合もあるため、青年期特有の疾病とは言い切れない。
また、動物ではネコなども発症し、毛繕いを頻繁に繰り返したりする。
脳疾患や解離性障害など、別の病気により強迫症状があらわれることがあるが、これは一般的には強迫性障害とは認められない。
また、こうした障害を持っている著名人としてデビッド・ベッカムらがいるように、外部からは日常生活に顕著な影響が見えない場合もある。
強迫性障害の原因 [編集]
強迫性障害は脳の機能障害が関連しており、前頭前野や帯状回など、複数の要因が関連して起きる。
しかし、発症に至る完全な原因はわかっていない。
患者の共通点として、元来几帳面であったり、融通が効かずに生真面目な性格傾向が挙げられる事も多い。
これらの性格と障害の因果関係はよくわかっていないが、このためから過去、完全に心の働きのみが原因となって起きる(心因性という)神経症の一種に分類されてきた経緯がある。
しかし近年、患者の脳を観察すると、セロトニンなど脳内の神経伝達物質のバランスに異常が見られることがわかった。
このため、強迫性障害は脳内部の化学的な働きの不具合によるものと、心理的な要因および体質などが複雑に関係して発症するのではないかと考えられるに至った。
また双生児研究から、遺伝的な要因を指摘するものもある[誰?]。
強迫性障害の治療 [編集]行動療法や認知行動療法、抗うつ薬を用いた薬物療法が有効である。
行動療法ではエクスポージャーと儀式妨害を組み合わせた、Exposure and Ritual Prevention(ERP)が用いられる。
エクスポージャーとは、恐れている不安や不快感が発生する状況に自分を意図的にさらすもので、儀式妨害とは、不安や不快感が発生しても、それを低減するための強迫行為をとらせないという手法である。
これらを患者の不安や不快の段階に応じて実施する。行動療法は単独でも用いることができるが、強迫観念が強い場合、薬物療法導入後に行動療法を行う方が成功体験が得られ易い。
嫌な単語が繰り返されるタイプの強迫観念(前記)のみの場合は行動療法が行いにくいため、強迫行為よりも治療が困難である。
強迫観念の内容を現実的に解釈しなおしたり、強迫観念を回避したり阻止したりせずそのままにするといった治療方法が有効であることが知られてきた[3]。
薬物療法としてセロトニン系に作用する抗うつ薬は強迫観念を抑えることが知られており、現在の日本では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)である塩酸パロキセチン、マレイン酸フルボキサミン、もしくは三環系抗うつ薬である塩酸クロミプラミンなどが用いられる。
日本国外の報告では最高用量で単剤投与が望ましいとされているため、塩酸クロミプラミンでは225mg、塩酸パロキセチンでは60mg、マレイン酸フルボキサミンでは300mgまで増量する場合がある。
これらは主治医の理由書があれば保険適応となるが、日本人の体格、体質ではこれらの条件が必ず満たされるものではないため、処方される薬の種類や用量には個人差がある。