・3 電力供給へ対応策~「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフトへ」
3.1 短期的な対応~主にこの夏のピークを見込んでの対応
【要旨】今春から夏の需要ピーク時(1 日最大電力予想=発電端で5,755 万kW)にかけて、とくに需要側への適切な措置~とくに大口需要家との需給調整契約の戦略的活用~を行えば、短期的にも無計画な「計画停電」を実施しなくても、十分に対応可能であることが明らかになった。
(1) 無計画な「計画停電」の問題
現状、緊急対応として実施されている「計画停電」では、地域を輪番的・機械的に停電させる措置であり、信号や鉄道、病院などのライフラインの優先もなく、また企業活動への配慮もないため、社会全体に甚大な悪影響を及ぼしている。
供給力から見て、なんとか対応可能な状況が見えているほか、自発的な節電も大きな成果をあげているため、少なくとも以下の大原則を適用すべきである。
【電力供給における基本的な考え方】
① ライフラインは最優先して電力供給を維持すること
② 一般家庭は省エネ・節電を呼びかけつつ、基本的には電力供給を維持すること
③ 業務および産業部門は、個別の需給管理ができることから、需給調整契約を戦略的に拡張して、市
場メカニズムと自発性を活用した需給管理を行うこと
(2) 2011 年春および夏の需要動向
東京電力における2011 年春の需要内訳の推計を示す(図3.1)。
図3.1:東京電力の需要推計(2011 年春) (万kW) ※環境エネルギー政策研究所の推計による
・東京電力は、3月14 日(月)の週明けに向けて4100 万kW の最大需要(18~19 時頃)を見込んでいたが、供給力が当面は3400~3500 万kW 程度しか期待できないことから、緊急に計画停電を予定した。
緊急の発表だったため、社会全体は混乱を極めたが、節電の呼びかけと自粛が予想外の効果を生み、計画停電はきわめて限定的な地域・時間に留まった。
このことから、省エネ・節電効果は、500 万kW 前後の効果があったのではないかと推測される。翌3月22 日(火)の週明けには、東京電力は3700 万kW の最大需要(18~19 時頃)に予測を引き下げている(3月22 日の東京電力ホームページより)。