身体表現性障害3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・4.慢性疲労症候群と線維筋痛症

以前,アメリカの有名ペインクリニックの看護師に会う機会があり,「まだまだ診断基準も曖昧に思える線維筋痛症という病名を,なぜあなたたちは積極的に使うのか」と尋ねた。

彼女から即座に返ってきた答えは「精神疾患では保険が下りないから」であった。慢性疲労症侯群と線維筋痛症をここで取り上げるのは議論も出よう。

精神医学は身体疾患で説明されると積極的な議論を挑まない傾向があるが,両疾患とも精神医学からみると精神疾患との合併や鑑別に関する研究が少ないわりに臨床に広まったような印象を受ける。

今後,精神医学からの厳密な検討が不可欠である。

Ⅳ.身体表現性障害に含まれる疾患への基本的対応

疾患ごとに治療方法に微妙な違いがあるし,併存する精神疾患の診断も治療方針の決定や転帰の予測にきわめて重要である。

以下に,身体各科の医師に知っておいてほしい身体表現性障害に含まれる各疾患における治療の最大公約数的な部分を述べる。

1.身体症状に関する説明

身体医は当然ながら,患者の訴える身体症状に対して,①現時点での身体医学からみた診断,②今後の検査の必要性,③症状の原因として考えられること,④考えられる治療などを説明する。

身体病変は全くないのか,軽度には認めるが患者の愁訴がそれに見合わないほど著しいのか,なども説明に加える。

心理的問題に関する説明は,身体医の精神医学に関する知識量に準じて行う。

実際の臨床では,「身体に異常がない」ことのみを根拠に,素人的知識で「精神的なもの」とか「自律神経失調症」などと安易に患者に告げる身体医が少なくない。

身体表現性障害に含まれる疾患では,発症機序にまだ不明な点が多いため,説明は精神的な問題が関係している可能性があるという程度にとどめたほうがよい。

不適切な説明は,その後の治療をかえって難しくする。

2.身体症状に関する与薬や処置

内科であれば,原因のはっきりしない痛みに対して鎮痛薬を用いることがある。また,身体病変との因果関係がはっきりしない愁訴に対して,診断的治療の意味も含めて外科的処置が施行されることもある。

これには,身体の異常所見によって自分の症状を説明し,治療を試みてくれるような医師を患者が評価するような傾向があることも関係するのかもしれない。

身体表現性障害でみられる身体症状に対する与薬や処置がすべて否定されるわけではないが,実施する場合はその意義を正確に説明して十分なインフォームドコンセントを得る。

不適切な説明のもとで身体への治療が実施され,症状が改善しなかったとの理由で精神科治療を求められることがあるが,治療は著しく困難である。

3.環境調整

精神療法として特に有用性が認められているものはない。身体症状や日常生活の差し当たりの悩みを聞くのはよいが,性格や深い精神面の葛藤にはあまり触れないほうがよい。

むしろ詳細に生活状況を問診し,対人関係,社会的・職業的環境と身体症状との問に関連が見出されるようであれば,そのような環境をできるだけ避けるように勧める。

4.薬物療法

不安感や憂うつ感が強い場合は抗不安薬や抗うつ薬を用いる.特に疼痛性障害では抗うつ薬が疼痛緩和にしばしば有効である。しかし,薬剤の副作用が新たな身体愁訴となることもあるため,副作用に関する説明が大切である。

常用量よりも少量から開始したほうがよい。

適応外使用になりやすい点にも注意する。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の発売などによって身体医が治療できる精神疾患の範囲が広がったかのように言われることがあるが,不適切な使用に出会う機会も多い。

製薬メーカーの宣伝文句に惑わされず,自ら先行研究の結果を確かめて用いるか,専門医に相談することが求められる。

5.専門家間の紹介と連携

身体表現性障害に含まれる疾患では心身両面に問題があり,また,しばしば複数の身体症状を有するため,各専門家間の連携が不可欠である。

複数の医師が関係した場合,各医師間の説明の微妙な違いがかえって患者の不安を高め,身体症状の遷延につながることもある。

担当する医師は十分な連携をとらねばならない。

精神科医に紹介する場合に重要な点は,「身体医の専門外のことを他の専門医に相談する過程である。

身体科でも引き続き並行して経過をみる。紹介先の精神科医とは連絡がとりやすい。
憂うつ感や不安感が身体症状を増悪させうる」などを患者に十分説明することである。特に身体科の医師が「あとは精神科医に任せたから」と患者に告げ,自ら専門家間の連携を絶つことは医学的に誤った判断であるし,その後の治療阻害要因ともなる。

身体表現性障害に含まれる疾患では,精神科医に紹介しても,精神医学がきわめて有効性の高い治療法をもっているわけではないし,治療中の脱落も多い。したがって身体医が精神面にある程度の配慮をしながら経過をみるほうがよいという考えもある。

紹介先は精神科,心療内科のいずれにしたらよいかと質問されることがある。精神症状への対応を求めての専門家紹介であるから,精神症状がいくら重症になっても対応できる医師にすべきであろう。

精神症状が重症になったとき,紹介先施設がさらに別の施設に紹介することになると患者の精神面への負担が大きい。

筆者は心療内科よりは精神科,精神科のなかでも精神保健指定医の在籍する施設への紹介が好ましいと考えている。

そのなかでさらに身体科の医師と良好な連携のとれる精神科医ということになると,適切な精神科医を見つけることはそれなりに難しい作業かもしれない。

内科のなかで心身医学を専門にする医師が近くにいれば,専門医への紹介の前段階として相談するのは有意義であろう。

おわりに

身体表現性障害について概説した。

身体表現性障害はいくつかの疾患をまとめた呼称であり,診断名ではない。

身体表現性障害には身体化障害,疼痛性 障害,心気障害,身体醜形障害,身体表現性自律神経機能不全などが含まれる。

臨床では身体表現性障害のなかのどの疾 患であるかを診断することが重要である。

身体表現性障害に含まれる疾患の診断で は併存する精神疾患の診断が重要である。

身体表現性障害に含まれる疾患への基本 的対応として,身体症状に関する説明,身 体症状に関する与薬や処置,環境調整,薬 物療法,専門家問の紹介と連携などに適切な配慮が求められる。


runより:自律神経失調症、慢性疲労症候群、線維筋痛症という言葉が出てきました。

化学物質過敏症の人も身体表現性障害と言われたり、逆もありえますね。

説明のつかない症状の便利語みたいなもので自律神経失調症もそんな感じです。