・女性とアルコール [編集]女性は、男性に比べ一般的に体が小さいこと、体内の水分率が男性より低いこと、女性ホルモンはアルコール代謝を阻害する要因となることなどから、同じ量のアルコールを摂取しても男性の2倍悪影響が出ると言われている。
アルコール依存症患者は、飲酒歴が長期に渡っているのが特徴であるが、女性の場合短期の飲酒歴でかつ飲酒量が比較的少量でも急速にアルコール依存症となってしまう危険がある。
ギリシャ語で“酒に酔わない”というところから、アルコール依存症になった女性をアメシストと呼ぶこともある。
一説によると、習慣飲酒からアルコール依存症への進行の時間は男性で約10年、女性では約6年であるとも言われている。
胎児への影響 [編集]妊娠中の母体と胎児は、胎盤とへその緒を通じて直接的につながっている。胎盤は一種のフィルターの役目を果たし有害物を遮断する機能を持つが、アルコールに関してはほぼ素通りしてしまう。
このため、母体に取り込まれたアルコールは胎盤を通じて速やかに胎児にまで到達する。
母体の血中アルコール濃度と胎児の血中アルコール濃度はほぼ同じになるので、胎児は否応なしにアルコール摂取を強要され心身を蝕まれる。
妊娠の全期間に渡りアルコールは胎児に悪影響を与えるが、特に妊娠初期においては胎児の発育が急速に進むので、胎児への悪影響は重篤なものとなる。
現在のところ妊婦の安全なアルコール摂取量は明確になっておらず、少量の飲酒でも胎児に重大な悪影響を与えてしまう危険性が指摘されている。
また、アルコールは一度飲みだすと抑制が利かなくなる性質を持っているので、近年では量にかかわらず妊娠中は飲酒を避けるべきという考え方が専門家の間で一致している。
母親がアルコール依存症で妊娠中も飲酒を繰り返した場合、胎児は先天異常をもつ胎児性アルコール症候群(FAS)として生まれてくる危険性が高まる。
アルコール依存症の母親から生まれた子の約40%がFASになってしまう。父親がアルコール依存症の場合も母親による影響ほど大きくはないが、胎児に障害が出る事例が報告されている。
FASの発症頻度は、アメリカで分娩1千回あたり1例、日本では分娩1万回あたり1例と報告されているが、日本では医師の間でさえもFASの認識が極めて低いので多くの暗数があると考えられ、実際にはアメリカと同程度の発症率であると思われる。
出産後も授乳期においては母親が摂取したアルコールが母乳を通じて乳児に影響を与える。
このため、母乳で育てることを選択した場合は授乳期間中も飲酒は避けるべきである。
授乳期間中に飲酒した場合は、一時的に母乳から粉ミルクに切り替え、飲酒後少なくとも12時間程度(飲酒量や体質によって異なる)は乳児へ母乳を与えることを避けたい。
なお、たとえ母親がアルコール依存症の場合であっても、妊娠、授乳期間中に飲酒しなければ子に障害が発生することはないと言われている。