・進行性疾患
自分が依存的に飲酒していると気付かずにそれを続けると更に飲酒量が増えて症状が悪化し、悪循環に陥る。
慢性疾患
一度依存に陥ると回復が極めて困難である。いわゆる「上手に酒を飲む」ということができなくなる。
人格変化を引き起こす疾患
依存に陥ったことを周囲のせいにしたりして攻撃的・他罰的・自己中心的な性格になる。
あるいは逆に自分のせいにして自虐的になり、後悔・不安・孤独に苛まれるようになる。
また、アルコールの入っていない状態であっても酔っているとき同じような言動をする「ドライドランク」と呼ばれる状態になることもしばしばある。
不治の疾患
アルコール依存症になったものが元の機会飲酒者に戻ることはほとんど不可能であるとされている。
たとえ身体的に回復し、数年にわたる断酒を続けていた者であっても、一口でも飲酒をすることによって再び元の強迫的飲酒状態に戻ってしまう可能性が非常に高い。
そして、進行性の病気であるためにさらに症状は悪化していく。
つまり、悪くなることはあっても、決して良くなることはない病気であり、寛解の状態で再発つまり再飲酒をどう防ぐかが治療の重要な点となる。
死に至る疾患
適切な対処をしなければ、内臓疾患あるいは極度の精神ストレスなどによる自殺・事故死など、何等かの形で死に至る。
アルコール依存症者の予後10年の死亡率は3~4割と非常に高く、節酒を試みた患者と通常に飲酒した患者とでは死亡率に差が見られず、断酒することによってのみ生存率が高まる。[2]
機能不全家族の形成要因
飲酒による問題行動により、その家族は常にストレスに苛まれることになる。家族は常に飲酒をやめさせることばかり考えるようになり、家族まで精神疾患を罹患してしまうケースも少なくない。
家族との信頼関係の亀裂に始まり、別居や離婚へと発展して家族が崩壊する原因となったりする。
アダルトチルドレン(AC、Adult Children of Alcoholics アルコール依存症の親のもとで育ち、成人した人々)の語源となっているように、アルコール依存症者のいる家庭での家族に与える影響は多大なものであり、とくに親から子へアルコール依存などの嗜癖問題が世代間で伝播する現象がよく見られる。そのため、アルコール依存症は患者本人だけの問題ではなく、家族全体を巻き込み、特に機能不全家族の形成を助長する。
治療 [編集]アルコール依存症の治療でまず大事なのが、「本人の認識」である。
多くのケースでは、アルコール依存症の患者は自分がアルコール依存症であることを認めたがらない。
認めてしまうと飲酒ができなくなってしまうからである。
何よりもまず、本人に疾患の自覚と治療の意思を持たせることが大切であり、回復への第一歩となる。
アルコール依存症の人の過剰な飲酒は、意志が弱いから・道徳感が低いからと言われたり、不幸な心理的・社会的問題が原因であると考えられがちだが実際はそうではなく、多くの場合この病気の結果であることが多い。
つまり、アルコールによって病的な変化が身体や精神に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということである。
このことをまず本人や周囲の者が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となる。
ただ、一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえるものは現在のところ、断酒しかない。
しかし本人の意志だけでは解決することが難しいため、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。
但しそれでも完治することはない不治の疾患であり、断酒をして何年・十何年と長期間経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に逆戻りしてしまう。
そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症者が一生涯断酒を続けることは大変な困難を要する。
なお、現在では、精神科において断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)等自助グループへの参加を奨励すると共に、ノックビン、シアナマイド経口薬などの抗酒剤の使用により、アルコール摂取を禁止し治療を進める病院が多い。