香料の健康影響2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・■香料とアレルギー
 香料の環境中での挙動や毒性については、ほとんど分かっていない。

これまで、研究対象とされて来なかったからである。

▼接触皮膚炎
 香料は、アレルゲンとして作用する。

香料が、皮膚への刺激を高めることが知られている。
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 ベルガモットオイルによる、ひどい日焼けの皮膚炎もある。

接触性の皮膚炎、じんましんがあり、即時型じんましんにより、アナフィラキシーショックを起こす可能性もある。
 香料がアレルゲンとして作用していることが多いため、検査用の香料ミックスが販売されている。

接触性皮膚炎のパッチテストの試料がある。
 香料によるアレルギー性接触皮膚炎は、欧州では人口の1% に起こっている。

日本では、1~2% である。

 化学合成された香料だけでなく、天然の香料でもアレルギーは起こる。

ラベンダーオイルやイランイランオイル、ジャスミンアブソリュート、カナンガオイル、白檀オイルなどの陽性率が高く、要注意である。

最近、ラベンダーオイルのアレルギー陽性率が高くなってきたのは、アロマテラピーの流行によるものではないかといわれている。
 香料は、時には重症皮膚炎を招き、死亡に至る場合もある。

オーデコロンをスプレーし、紅斑と中毒性上皮壊死を起こして、最後に死亡した例がある。
 また、香料に直接接触しなくても、空気中の香料によってアレルギーが起きる。

接触皮膚炎という言葉から、香料に直接接触するイメージがあるが、空気中の物質によっても刺激やアレルギーによる皮膚炎が生じる。

▼ぜん息と香料
 ぜん息患者数が、近年、急増している。

ぜん息患者は、香料などを避けるように勧められている。香料は、ぜん息を誘発したり、悪化させることがあるからである。
 臭いが、ぜん息を悪化させるかどうかの強制呼気量測定をした結果、臭いはぜん息悪化を招く重大な原因であると報告されている。
 また、天然の香料であっても、ぜん息に影響を及ぼす。ぜん息や鼻炎患者へのアンケートの結果、花や、カバノキで、ぜん息や鼻炎が誘発されると答えた患者が、79% にも上った。

花では、ヒナギク類、ヒヤシンス、ユリ、スズランが多かった。香料によるぜん息発作誘導のメカニズムは、よく分かっていない。

通常のアレルギーとは関係がない場合があるとする見解がある。
 香料は、一部の人の眼や気道に症状を起こすことが知られている。

香料によるこの症状は、アトピーとの関連がなく、IgE(外部抗原に対して人体内にできる抗体)が仲介するアレルギーとは異なると考えられている。

香料に対する好塩基球の反応性亢進が、香水に影響を受ける患者にみられている。
 また、アレルギーや気道閉塞がない患者でも香料の影響が調べられている。臭いが分からないように鼻をふさいで、香料の影響が調べられた。

その結果、気道過敏性やぜん息が、気管支閉塞なしに香水によって引き起こされることがわかった。

この過敏性は、臭覚によって起こるのではなく、気道や眼を通じた三叉神経反射によって誘導されているのだろうと、研究者は考えた。活性炭入りマスクに予防効果がないことも分かった。
 ヘアスプレーの香料によって、気道機能亢進者は、最大呼気量が減少する。
 職場のネコのトイレ用の砂に添加された香料が原因で、喘息を悪化した事例も報告されている。

■変異原性(DNAに傷をつける。生殖により、子孫に受け継がれる)  香料自体が変異原性を持つ場合があるが、さらに他の物質の変異原性を高めることもある。
 多くの香料が、サルモネラ菌で変異原性を示すとされているが、特に合成ムスクに顕著で、生体外異物を排出するトランスポーターを阻害する性質があり、毒性を発揮する可能性がある。
 天然に由来する化学物質は安全であると誤解されているが、ローズマリー、月桂樹、マジョラムの香気成分の1つであるテルぺネオールは、変異原性を示したと報告されている。

ローズマリー、ベイリーフ(月桂樹)は肉料理に家庭でよく使われ、その他マジョラムも、前述2種と共に調合スパイスに広く含まれている。

■発がん性(DNAが傷つく)
 香料の発がん性は、よく検討されていない。

しかし、一部の香料には発がん性があり、また一部は他の化学物質の発がん性を高める。
 ベンゾフェノン(アリルケトン)は、光重合開始剤や香料として用いられるが、小動物実験により、尿細管腫、単核球白血病の発生、また、肝細胞肉腫、嗅上皮の異型性、組織球肉腫の増加が見られた。
 クマリンは、天然に存在する重要な化合物の基本的構造を持ち、香水、化粧品、その他、また食品フレーバーとして使われている。

実験により、多様な発がん性(尿細管腺腫、肺胞、細気管支の腺種とがん、肝細胞線種)があり、前胃の扁平細胞乳頭腫もわずかに増加するという結果を示した。
 ベンジルアルデヒドは、食品、飲料、医薬品、香水、石鹸、色素製造に使われるが、一部に発がん性の証拠が確認された。d-リモネンは、柑橘類の果皮に含まれ、香りを構成する物質である。

肝臓の尿細管過形成や腺腫、腺がん発生率増加が認められた。
 アリルイソバレレートは合成香料で、1950年から広く使われている。石けん・洗剤、クリーム、香水、非アルコール飲料、アイスクリーム、ゼラチン等に広く使われている。この物質は、造血器の新生物を発生させた。
 ムスクケトンは、化粧品に用いられる典型的な合成化合物である。

水中や堆積物、魚等の中に見られ、人間の脂肪組織、母乳中から検出される。

ムスク類は、遺伝毒性を強める物質であることが知られ、ムスクケトン被ばくは、人間が発がん物質による害を受け易くし、ひいては、生体異物を排出する能力を阻害する。

■香料の残留・汚染
 合成ムスクは、パーソナルケア製品や家庭用製品に添加されている。

合成ムスクはまた分解されにくく、下水処理場でも処理できず、河川や海、空気中に排出される。

アパートや幼稚園でも検出されており、化学物質に対する感受性の高い子どもや病人へは、強い影響が考えられる。

■香料の規制
 日本では、製品に何種類使用しても、「香料」としか記載義務がない。

ヨーロッパでは、21種類の香料成分の記載が必要である。
 日本のみでなく世界的に香料製品の規制はゆるく、香料自体および製品を作るために使用するフタル酸や防腐剤などの添加物による人体や環境への影響が懸念されている。

■提言
 香料にはよい効果もあり、香料を利用した製品の関連企業により、その効果は広く情報が提供されている。

しかし、負の側面の情報は提供されていない。

香料には健康への悪影響がありうる。

香料には心地よく感じるのと逆の作用もあり、香料による不快感を訴える人たちもいる。
 香料は、例え安全な化学物質のみが使用されていたとしても、臭いを好ましいと感じる人々の場でのみ使用すべき化学物質である。

使用を法的に直ちに規制されなくとも、公共の場などで使用するのは自粛すべきである。

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(注) ムスクは、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢から得られる分泌物を乾燥した香料、生薬の一種。ワシントン条約により商業目的の取引は原則として禁止された。

そのため、現在、香料用途としては合成香料である合成ムスクが用いられている。