・厚生労働省HPより
今後の化学物質環境対策の在り方について(諮問)
環境基本法(平成5年法律第91号)第41条第2項第2号の規定に基づき、今後の化学物質環境対策の在り方について、貴審議会の意見を求める。
(諮問理由)
平成18年4月7日に閣議決定された第三次環境基本計画は、化学物質の環境リスクの低減に向けた取組を重点分野政策プログラムの一つに位置づけ、中長期的な目標及び施策の基本的方向を設定した上で、科学的な環境リスク評価の推進、効果的・効率的なリスク管理の推進、リスクコミュニケーションの推進、国際的な協調の下での国際的責務の履行と積極的対応を重点的取組事項に定めている。
今後は、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号)及び化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)の次期見直し等において、重点的取組事項に沿った施策をより具体化し、強力に展開していくことが求められている。
こうした状況等を踏まえ、今後の化学物質環境対策の在り方について、所要の検討を行う必要がある。
第三次環境基本計画「化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」における現状と課題
<環境基本計画における記述>
1 現状と課題
(1)化学物質の問題の背景
我々の暮らしは、多くの種類の化学物質を様々な用途に使うことによって成り立っています。
化学物質には、合成により製造されるもの、天然に存在するもの、燃焼などにより非意図的に生成するものがあります。
合成により人為的に作られる化学物質には、成型加工して工業製品や日用品として使用されるものと、製造された状態のまま、または複数の化学物質と混ぜ合わせて配合品として使用されるものがあります。
化学物質の製造量・存在量には多寡があり、環境への排出や環境中の残留状況も異なります。
また、有害性、環境残留性、生物蓄積性、長距離移動性等の性質も様々です。
このような化学物質の適切な管理には、化学物質に固有の有害性の程度と人や生物へのばく露のレベルを考慮し、環境を通じて人や生態系に悪影響を及ぼす可能性(環境リスク)をできるだけ少なくすることが基本となります。
しかし、その環境リスクは科学的に完全には解明されてはおらず、管理に際して不確実性の中での意思決定が必要となることがあります。
(2)これまでの対策の推移
化学物質の「環境リスク」の概念を打ち出したのは、第一次環境基本計画(平成6 年)でした。
第二次環境基本計画(平成12 年)において、有害性とばく露を考慮し、規制に加え自主的取組等の多様な対策手法を用いて環境リスクを低減するという方向が明示され、その後、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化学物質審査規制法」とします。)に基づく規制にばく露の観点や動植物の保護の観点が導入されたほか、大気汚染防止法に事業者の自主的取組が位置付けられるなど、取組が進められました。
その結果、有害大気汚染物質やダイオキシン類の対策等は大きな成果を挙げました。
しかし、化学物質の環境リスクの低減のためには、なお多種多様な課題が残されています。
また、今後5 年程度を見渡せば、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(以下「化学物質排出把握管理促進法」とします。)については平成19 年以降、化学物質審査規制法にいては平成21 年以降にそれぞれ法律の施行状況について検討を加え、結果に応じて必要な措置を講ずることとされています。
(3)有害性、ばく露、リスクに関する情報の不足
市場に流通している化学物質について有害性やばく露、環境残留性に関する情報が不足していることが課題として挙げられます。
我が国では、化学物質審査規制法に基づいて、新規に製造・輸入が行われる化学物質については事業者が事前に国に届け出る仕組みが整備されています。
同法の公布時(昭和48年)に既に製造又は輸入が行われていた約2 万種の既存化学物質については、これまで国が安全性の点検を実施してきました。平成16 年度までの調査済み又は調査着手済みの既存化学物質の数は、分解性・蓄積性が1455 物質、人毒性が275物質、生態毒性が438 物質となっています。
また、OECD 高生産量化学物質プログラムにおいて、我が国の政府及び化学業界も積極的に参加して安全性点検を進めています。
今後、産業界と国が連携して、安全性点検をさらに加速化することが必要になっています。
また、化学物質の特性には、免疫系や神経系への影響、他の物質との複合影響、次世代への影響の懸念や食物連鎖を通じた蓄積性、地球規模での長距離移動性等、科学的なメカニズムが十分に解明されておらず、多様なリスクを評価するための実用性の高い試験・評価方法を研究開発することが課題となっているものもあります。
ばく露に関する情報も不足しています。
製造・輸入量や用途、環境への排出量については、化学物質審査規制法や化学物質排出把握管理促進法に基づき、一部が把握されているのみです。
環境中の残留量についても一部の物質がモニタリングされているにすぎず、環境中で検出されてもその発生源や排出経路、人や動植物へのばく露経路の特定が困難な場合があります。
ばく露の把握に当たっては、排出源や排出経路の多様さ、天然由来の化学物質の存在に起因する地域特性についても、十分な考慮が必要です。
さらに、製品中に含まれている化学物質の種類・量や、製品の廃棄に伴う排出量も必ずしも十分に把握されていません。
化学物質の有害性やばく露に関する情報は、製造事業者や使用事業者が把握していることもありますが、その情報の関係者間での共有が必ずしも十分ではありません。
最終製品に含まれる化学物質についてどのような情報を消費者に提供していくべきかについても課題となっています。