・wikipediaより
更年期障害(こうねんき しょうがい、英: menopause, postmenopausal syndrome, PMS)とは、卵巣機能の低下によるエストロゲン欠乏、特にエストラジオールの欠乏に基づくホルモンバランスの崩れにより起こる症候群で、その症状がひどく、仕事や家事など日常生活ができないほどの状態をいう。
概要現在日本では、約2,000万人の更年期の世代(閉経(50歳前後)をはさんだ約10年間)の女性の多くが、エストロゲン欠乏による心身の様々な不調(ほてり・のぼせなどの血管運動神経症状)を有していると言われている。
医師により「更年期障害」と診断される人は、更年期女性の2-3割とされている。
「特定非営利活動法人 女性の健康とメノポーズを考える会」[1]が2002年に行った更年期世代の勤労女性を対象に行った調査では、8割の女性が何らかの症状を有しており、そのうち4割が更年期の症状のために仕事に不都合があったことが判明している[2]。
40代以降の男性にも起こることがあり、特に男性に起こる更年期障害のことを男性更年期障害と呼ぶこともある。
症状自律神経失調症様の症状、脈が速くなる(頻脈)、動悸がする、血圧が激しく上下する、腹痛、微熱、そのほか女性の場合はホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、多汗、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、不眠、疲労感、口の渇き、のどのつかえ、息切れ、下痢、便秘、腰痛、しびれ、知覚過敏、関節痛、筋肉痛、性交痛、生理不順など。男性の場合は勃起不全(ED)といった生殖器症状が出現する。
精神症状
情緒不安定、不安感やイライラ、抑うつ気分など精神的な症状が現れることも多い。
いずれも心身症の様相を呈することが多く、症状の強弱には精神的要素が大きくかかわってくる。
原因女性の場合、閉経期前後になると卵巣機能が低下し、卵巣から分泌される女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の量が減少することにより起こる。
男性の場合、30歳前後より睾丸の精巣から分泌される男性ホルモンであるテストステロンの量が減少し、その結果40代後半になってくると更年期障害の症状が起こることがある。
男性更年期障害が、女性の更年期障害よりも比較的問題となりにくいのは、テストステロンの分泌量の低下がエストロゲンのそれよりも緩やかであるため、その症状が表に出にくく、「年のせい」で片付けてしまうことが多くあるせいである。ただし、あくまで女性の場合と比較してということであって、男性の場合も、個人差により強い負担や自覚症状を伴う場合がある。
治療女性に対しても男性に対しても、ホルモン療法が有効とされる。その他、漢方薬や精神安定剤を使って治療することもある。
女性に対しては、閉経前後に体内で不足してきた女性ホルモン(エストロゲン)を、飲み薬(経口剤)や貼り薬(貼付剤)として補充する「HRT(ホルモン補充療法)」が行われる。
欧米ではすでに30年以上の実績があり、日本でも十数年来行われてきた療法で、更年期障害を改善しQOL(生活の質)を高め日常生活を快適に過ごすために有効かつ適切な療法として評価・活用されている[3]。
HRTを継続して受けている間に、運動・食事・検診などにも注意するようになるという副次効果も推察されている[3]。月経の有無や症状の種類に応じ、エストロゲン単剤あるいはエストロゲン・黄体ホルモン配合剤などが使用される[4]。エストロゲンの補充によるさまざまな効果が女性の健康とメノポーズを考える会[1]から紹介されている[5][6]。
しかし、その利用方法や症状改善の効果については、まだ一般女性には的確な情報が充分に届いていない[3]。女性の健康とメノポーズを考える会[1]からは「婦人科・更年期に詳しい医療機関」[7]が紹介されている。
また同会では、7年間にわたる1万件を超える電話相談で得られた女性たちのさまざまな生の声(誰にもわかってもらえない更年期の悩みの数々)から更年期の症状を徹底紹介し、第一線の更年期専門医・各界一流の講師陣がバックアップ執筆した内容を一冊の本にまとめ頒布している[8]。
日本ではこれまで経口剤、貼付剤が使用されてきたが、2007年に国内初の「肌にぬるプッシュ式ボトルのジェル剤型」エストラジオール外用剤「ル・エストロジェル」[9]が新たに承認、発売された[10]。塗布跡が残らず皮膚刺激も少なく毎日の使用が簡便で一定量が取り出せるのが特徴である。
男性に対しては、ほかにクエン酸シルデナフィル[11]のようなED治療薬を使用することもあるほか、生活習慣を改めることにより症状が軽くなることもある。
今後の課題1996年の発会以来、女性の健康とメノポーズを考える会[1]は、更年期世代の女性たちが、充実した更年期医療が受け入られるために、「充分にコミュニケーションのとれた医療」[12]、医療従事者全体が更年期医療に関心と理解を持つことが、更年期医療に関連するさまざまな問題点の改善に繋がることの重要性を提言している。更年期女性の生涯にわたるQOL向上を目指し、健康作りのための啓発とサポート活動を続けている[3]。
現在、更年期世代の人口に比し更年期医療機関がとても少ないため、女性たちは更年期医療機関を探し出すのが容易ではなく、同会の電話相談にも問い合わせが相次いでいる[13]。
同会[1]は、「現在、更年期世代の女性たちは、より良い更年期医療を求めている。
より多くの女性が各地域で充実した更年期医療を等しく受けることができ、QOLの高い前向きな生涯を歩んでいけるよう、後から続く世代の女性たちのためにも、今、確かな礎を築いて行かなければならないのではないだろうか」[3]と警鐘を鳴らしている。
備考(諸外国との比較)各国での更年期医療事情調査結果[14][15] :日本でのHRT普及率は、他先進諸国と比べると極めて低く、アジアの中でも低い。
日本:1.5%
アメリカ:40%
オーストラリア:66%
カナダ:45%
イギリス:37%
アイスランド:47%
フランス:41%
ベルギー:39%
フィンランド:35%
台湾:17.4%
韓国:8.8%