・旭川市HPよりまちづくり推進課
シンポジウム 化学物質と健康被害「シックハウス」
平成13年2月21日(水)
旭川市大雪クリスタルホール
特別基調講演
『シックハウス症候群(最近の研究を含めて)』
(社)北里研究所病院 臨床環境医学センター長 石川哲
今日は菅原市長をはじめ市民の方々、医大、医師会、保健所、木の城たいせつの皆様、NPOのグループの皆様ほか、多数のご参加の上で講演させていただき、光栄に存じます。
私が旭川と縁を持ったのはひじょうに古く、28年前くらいに開校した医科大学で、23年前くらいから毎年講義に来ていました。
その時、東京からやって来て、空港に降りた時、「何て空気がいいんだろう」と思いました。
ここに患者さんを連れてきたらどんなによいだろうと夢見ていたのです。
そんな折、15年位前から旭川で医療休養基地の萌芽的な研究が始まりました。
この10年で動きがさらに活発になりましたが、今の市長さんになってからさらに積極的になってきました。
そして、化学物質の様々な問題が皆さんの身近な問題になってきました。
使用して50年位経つと、どちらが悪くて、どちらが良いものだったかはっきりしてきます。
現在、安全なものとして使われていたものが、実は有害だったと後で分かる場合がある。今、わけのわからない病気がでてきたのも、そうした流れの一つかもしれません。
今から3年位前、科学技術庁で、生活者二一ズ研究が始まりました。
私たちが柳沢教授とともに担当したのは「化学物質の人体における汚染負荷の実態と医学的影響」についてです。
初年度に臨床的患者の把握診断やアンケートを作り、鑑別診断をやろうということになった。だいたい3年かけて、代表的な化学物質に対する反応や反応レベルの解析を行い、治療法の開発では、「クリーンルーム」をつくろうと考えました。
それから、クリーンハウス、サナトリウム構想を打ち出し、現在、3年目です。
アレルギーと化学物質との関係については、どの物質とどのアレルギーが、どのような関係にあるかということは、完全には解明されていません。学問というものは、すぐにその場で分かるものではなく、多くの努力と時間を要するものです。
だいたい、ノースカロライナ州で約35%がアレルギーであるというメッグ先生の報告があります。
化学物質過敏症は13.9%これは医療機関の統計なので数が多目ですが、最近、米国政府が行った調査によると、6.5%、少ないところで2.5%という数値です。
アレルギーと化学物質過敏症を合わせた数は16.9%としていますが、この値のうち、3%くらいが純粋なアレルギーと関係するものでしょう。
日本では、国が1991年に実施した、皮膚や呼吸、目、鼻、喉などに関する調査で、医師がアレルギーと診断したものが34.9%で、米国の35%とほぼ一致している。
この問題については、日米ほぽ差がないと言えます。
ある大学のグループがトータルVOC、いわゆる総揮発性化学物質を測定しますと、その値はだいたい1000μg/m3でした。その中には、アルコール類、ケトン類、エステル類、テルペン類、ハロゲン類などの芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が含まれています。
ある家で、ホルムアルデヒドが0.168ppm(平均)でした。基準値はO.08ppmですが、高い部屋で0.189、全ての場所で基準値をオーバーしていました。
その患者さんの家に住んでいる男の子は、現在5才です。
もともとアレルギー体質で、軽いアトピ-、ぜん息、鼻炎、結膜炎があったのですが、治療により症状が治まり、アレルギーの反応も治まりました。
ところが、その後、モダン住宅を建てて家族が引っ越した。そこは、VOCの数値が高く、ホルムアルデヒドO.6なのをはじめ、すべて基準値をオーバーしており、アレルギー反応がひじょうに強くなったのです。
そして、重症のぜん息を起こし、鼻炎もひどくなった。それを何とかコントロールし、現在、じん麻疹に悩みながらも何とか生活しています。
このように家の引っ越しがきっかけで、過去に持っていたアレルギーが悪化したケースがたくさんあります。
ですから、家の中の揮発性の物質や有毒化学物質の測定は必要なのです。