・家族集積性
アルツハイマー病のサブタイプには、常染色体優性の遺伝をする「家族性アルツハイマー病」(FAD) がある。
原因遺伝子としては4種類が知られており、21番染色体のアミロイド前駆体蛋白遺伝子、14番遺伝子のプレセニリン1遺伝子、1番遺伝子のプレセニリン2遺伝子、19番遺伝子のアポリポ蛋白E遺伝子のいずれかが変異を起こすとFADが発症する。
FADは、常染色体優性遺伝、つまり片方の親がFADであれば子供は性別に関係なく2分の1の確率でFADに罹患するというものである。
そうでない大部分のアルツハイマー型認知症にも、遺伝的要因は少し影響する。
親族にアルツハイマー型認知症の患者がいる場合、多少罹患のリスクが上昇するといわれている。
特に50 - 54歳に本症を発症した身内がいる場合、本症を早期発症する危険は約20倍に上るというデータがある。
発症の危険因子
年齢・家族歴・ApoEe4などの遺伝子型・高血圧・糖尿病・喫煙・高脂血症・ある種の生活習慣などが本症の危険因子となる。
たとえば、アルツハイマー病罹患リスクは、糖尿病患者では1.3 - 1.8倍に、特にApoEe4アリルが伴う糖尿病の場合は、5.5倍に増加すると報告されている。
本症を含む認知症の発症危険因子の詳細は、認知症#危険因子を参照。
A. 生活習慣上の危険因子
(下記の#予防|予防の項も参照)
•食習慣では、魚(EPA・DHAなどの脂肪酸)の摂取、野菜果物(ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなど)の摂取、赤ワイン(ポリフェノール)の摂取などが本症の発症を抑えることが分かっている。
1日に1回以上魚を食べている人に比べ、ほとんど魚を食べない人は本症の危険が約5倍であるというデータがある。
•運動習慣も発症の危険を下げる。
有酸素運動で高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増すため。
ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している者は、全く運動しない者と比べて、発症の危険が半分になっていた。
•知的生活習慣も発症の危険を下げる。
テレビ・ラジオの視聴、トランプ・チェスなどのゲームをする、文章を読む、楽器の演奏、ダンスなどをよく行う人は、本症の発症の危険が減少するという研究がある。
•たばこは、発症の危険性を高める。
自らタバコを吸う(能動喫煙)だけではなく、非喫煙者であってもタバコから出る有毒物質(受動喫煙)の影響を受け発症率が高まる。
B. 喫煙に関する議論
喫煙が本症の危険因子か否かについては、これまで議論があった。
喫煙を含むニコチンの摂取がニコチン性アセチルコリン受容体よりドパミン神経系に作用し、アルツハイマー型認知症の発症を減少させるという説もあったが、後に、この説を唱える研究団体がたばこ産業から資金を受け取っていた事実が暴露された。
この説は、喫煙自体が他の疾病リスクを高める性質があるほか、複数の大規模なコホート研究・症例対照研究などによって、現在では否定されている。
19の疫学研究のメタ分析では、喫煙により本症の発症のリスクが1.79倍に有意に上昇するという結果が得られている。