・疫学
疫学的原因
環境が清潔すぎると、アレルギー疾患が増えるという衛生仮説は非常に話題となっていたが、近年、ドイツを中心とする医科学チームの研究により乳幼児期におけるエンドトキシンの曝露量が、以後の花粉症やぜんそくの発症に密接に関係していることが明らかにされた。
これは、乳幼児期の環境が清潔すぎると、アレルギー疾患の罹患率が高くなるという衛生仮説を裏付ける重要な報告である。
また、これらの研究を取り上げたドキュメンタリー番組「病の起源 (NHKスペシャル) 第6集 アレルギー ~2億年目の免疫異変~」が2008年11月23日(日) 午後9時~9時49分にNHK総合テレビジョン|NHK総合テレビで放送された。
患者数
現在、日本国民の15%以上が花粉症であると言われる。
環境省は1998年の推計として16%という数字を挙げている。
だが、大規模な疫学調査は実際には行われておらず、その実態は推測によるしかない。
1994年の花粉症を含めたアレルギー性鼻炎の調査では、その患者はおよそ1800~2300万人と推定された。
信頼性に問題があるため、あくまでも参考値ではあるが、2005年末から2006年にかけて行われた首都圏8都県市によるアンケートでは、花粉症と診断されている人が21%、自覚症状からそう思うという人が19%、すなわち花粉症患者は40%という数値が出されている。
また、ロート製薬によるアンケートでは、16歳未満の3割が花粉症と考えられるという。
その他、病院への受診者の推移などから、1970年代に患者数は3~4倍に増加したとの報告や、最近10年で患者数が倍増したなど、さまざまなデータがある。
しかし、1990年代以降の患者数の増加は顕著ではなく、今後もそう急激な増加はないだろうと考えられている。
医療費等
使われる医療費は、1994年の推計では年間1200~1500億円とされた。
1998年の調査では、有病率10%とした場合の年間医療費が2860億円
、労働損失が年間650億円と推定された。
なお、第一生命経済研究所の試算によれば、患者が花粉症対策に用いる費用(俗に花粉症特需といわれる)は639億円に上るが、シーズン中の外出などを控えるために、1~3月の個人消費が7549億円減少するという(ただし、これはスギ花粉の大飛散があった2005年の場合である)。
地域差
最近はスギがない沖縄県や北海道へ、花粉を避けるための短~中期の旅行に出かける患者が増えているという(俗に花粉疎開と呼ばれる)。
旅行会社がそうしたツアーを売り出すことも行われており、観光資源の一つとして誘致に名乗りをあげる地域もある。
患者が移住した例も報道された。
医学的にみれば転地療養といえる。
•[http://www.santen.co.jp/al/al_list1.html 地域別花粉情報]
男女差
一般に、小児期には男性に多く、成人では女性に多い傾向があると言われる。
自然治癒率
自然治癒率についての確立した知見はないが、概ね1~2割と言われる(治癒とは、臨床的に3シーズン連続して症状を呈さない状況を言う)。
世界の花粉症
すでに述べたように、ヨーロッパではイネ科の植物、アメリカ合衆国|アメリカではブタクサが多い。
日本のスギ花粉症を含めて、世界の3大花粉症ともいわれる。
ヨーロッパのうち、大陸では各種の樹木による花粉症も少なくはないが、花粉症発祥(発見)の地であるイギリスではことにイネ科の花粉症が多く、人口の15~20%以上が発症しているという。
文献的にはスペインにも多い。
一般に北ヨーロッパ|北欧と呼ばれるスカンジナビア地域ではシラカバなどのカバノキ科の花粉症が多いといわれ、10~15%程度という数字がある。
最近ではこうしたカバノキ科の花粉症をヨーロッパの花粉症の代表的なものとして述べることもある。
地続きであるロシアでは極端に少ない。
アメリカ合衆国における有病率は5~10%程度といわれる。
ブタクサがほとんどともいわれるが、国土が広大なため、地域によってさまざまな種類の樹木・草本が問題になっているようである。
北欧と同じく寒冷な地域であるカナダではカバノキ科の花粉症が多く、6人に1人という数字もある。
アジア太平洋地域では、文献的にはトルコやオーストラリアなどが40%以上という異常に高率の有病率を示しているが、この数字には疑問が残る。
実際には10~20%と推測される。
世界的にみて、先進工業国ではおおむねアレルギーが増えており、花粉症も全人口の1~2割というところではないかとみられている。
いずれも、英語圏でなくとも、あるいは Hay(干し草)が原因ではなくとも、Hay fever の病名が慣用されることがある(そのため、花粉症の説明において、干し草が原因ではないとのことが述べられることもある)。
さらに、アレルギー性鼻炎全般を Hay fever と代名詞的に総称することすらあるようであり、一般向けの病気についての解説等は、日本の感覚では疑問を持たざるを得ないことがある(もっとも、症状や治療方法はほぼ同じであるため、原因物質によって区別する必要もない)。
これらのうち、カバノキ科の花粉症が多い北欧やカナダでは口腔アレルギー症候群を示す患者も多く、カナダでは花粉症患者の半数程度が経験するという。
こうした日本国外の花粉症については、プロスポーツ選手の日本国外進出などにともなって、ニュースとしてよく目にするようになってきている。