・ニュースレター 第54号 (2008年10月発行)
入門・重金属問題―その3
「カドミウム」について
元東京都健康安全研究センター 小野塚春吉
重金属問題シリーズ、今回はカドミウムです。
鉛、水銀問題に比べると、カドミウムは発見された歴史も浅く、比較的「最近の問題」といえるかと思います。
●カドミウムの歴史
カドミウムは、1817年ドイツのF.Stromeyerにより菱亜鉛鉱から分離発見され、原料(ラテン語のcadmia=カラミン)に因んで「カドミウム」と命名されました。
別の資料によれば古代ギリシャ神話に出てくるカドムスに因んで命名されたとの説もあります。
20世紀初頭までは、産業的利用価値もさほどなく、スズと同じく「抗腐食性のある金属」程度の認識であったようです。第二次世界大戦中に、各種金属のさび止め用メッキとしてすぐれていることがわかり、航空機にとって必需品となったとのことです。
●カドミウムの毒性
重金属汚染の権威H.A.シュレーダーは、「カドミウムは、蓄積性であるとともに、隠微な形で害を及ぼす微量金属の典型であり、また、非常に広い範囲にわたって深刻な病気―その多くは死につながる―を現実にもたらしているという意味でも、有害金属の典型といえよう。
いうなれば、カドミウムは諸金属のなかで悪役中の悪役にほかならない」(磯野訳『重金属汚染』)と述べています。
富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病の原因物質がカドミウムであることは良く知られています。カドミウムの標的臓器は腎臓で、最初に現れる障害が近位尿細管の再吸収機能障害です。
さらに暴露量が増加すると骨障害へと進む。
骨障害は、骨軟化症と骨粗鬆症が合併されたものです。
この最重症例がイタイイタイ病です。
腎障害を起こす腎皮質カドミウム臨界濃度は200mg/kg(湿重量ベース)、カドミウム生涯累積摂取量は2000mgとされています。
カドミウムは、「ヒトへの発がん性あり」とIARCで評価されており、内分泌攪乱作用(環境ホルモン作用)も疑われています。
また、カドミウムの生物学的半減期は極めて長く20~50年(最良推定値30年)とされています。
胎盤はほとんど通過しません。