・●鉛削減をめぐる国際的動き
鉛のリスク、特に子どもへのリスクを削減しようという取り組みは世界的な動きになっています。
OECDでは、1996年に鉛リスク削減宣言が採択されました。1997年には、G8環境大臣会合において、子どもの環境保健に関するマイアミ宣言が採択され、その中で子どもの鉛曝露の低減が対策事項のひとつに掲げられました。
国連環境計画(UNEP)では、2001年から地球規模での水銀汚染に関する活動(UNEP水銀プログラム)を開始し、2005年からは、鉛・カドミウムも対象に加えたUNEP重金属プログラムの取り組みを行っています。
化学物質安全政府間フォーラム(IFCS)では2006年9月に、ブダペストで開催されたフォーラムにおいて「水銀、鉛及びカドミウムに関するブダペスト声明」が採択されました。
EUでは、電気・電子機器への鉛を含む6物質の使用を原則禁止する指令(Rohs指令)が2006年7月から発効しています。
飲料水・食品中の鉛は、WHOを中心に基準が定められています。
飲料水中の鉛については、WHOの飲料水水質ガイドライン(1996年)が定められ、世界的に広く準拠されています。
食品については、1993年にWHOとFAOの合同食品添加物専門家会議(JECFA)が耐容週間摂取量(PTWI)を25μg/kg/体重/週と定めています。
CODEX(合同食品規格委員会)では、2004年に鉛の摂取量削減についての行動規範を定め、各国に鉛摂取量削減に取り組むことを推奨しています。
●日本の鉛対策の現状と課題
日本では、飲料水の鉛についてはWHOのガイドラインに準拠した水質基準が定められていますが、食品については特に基準値が定められていません。食品からの曝露量は、マーケットバスケット調査結果に基づいて試算すると、JECFAのPTWIの15%、小児では23%に及んでおり、曝露レベルはかなり高いといえます。
日本人の鉛の摂取経路のうち、食品からが大半であると推定されており、食品対策は重要です。
このような状況を踏まえて、先日、内閣府の食品安全委員会では、食品中の鉛についてのリスク評価を行うことを決定しました。
私たちもその進行を見守るとともに、随時意見具申を行う必要があると思います。
なお、ガラス、陶磁器等の鉛の規格については、今般、食品衛生法の基準が強化されました。
また、東京都の調査で鉛の高濃度含有・溶出が指摘されていた金属製アクセサリーについては、「乳幼児が接触することによりその健康を損なうおそれがあるおもちゃ」として、食品衛生法の規格基準が設けられました。
しかしながら、衣類、バッグ、クレヨン、絵の具など子ども用の製品については、鉛の規制はありません。EUのような電気・電子機器や、レジ袋などの容器包装剤への規制も、未だ実施されていません。
廃棄物焼却施設からの排ガス規制もありません。さらに、UNEPのプログラムに沿ったグローバル・アクションを行うための法的枠組みも整備されていないのが実情です。
国民会議では、既に「鉛リスク削減に関する提言」(2006年5月 http://www.kokumin-kaigi.org
)を作成し、各省庁に提言してきましたが、今後さらに働きかけを強化していきたいと考えています。
皆様のご協力をお願いいたします。