・ュースレター 第51号 (2008年4月発行)
入門・重金属問題―その1
「鉛」について
事務局長・弁護士 中下 裕子
国民会議では、10周年記念事業として、重金属問題連続セミナーを開催することになりました。
そこで、これに合わせて、重金属問題に関する基礎知識――毒性や用途、対策の現状と課題など――について、わかりやすく解説する入門シリーズを企画しました。第1回目は「鉛」です。
●鉛の歴史
鉛は、融点が低く加工しやすい、腐食しにくいなどの特徴から、早くから人間の生活に利用されてきた金属です。
最古の鉛は、トルコで発見されたBC6000-8000年の鉛のネックレスとされています。
その他にも、食器、ガラス、陶器の釉楽、水道用鉛管、絵の具など、さまざまな用途に使用されていたことが知られています。
その一方で、鉛中毒も古くから報告されています。古代ギリシャの医師ヒポクラテスも鉛中毒の症例を記述しています。ローマ時代のワインには大量の鉛が混入しており、ワインを多飲した貴族階級に鉛中毒が多発したことが知られています。
近代以降の鉛中毒は、鉛の採掘や鉛電池工場の労働災害がほとんどです。日本では、大正時代に乳幼児に原因不明の脳膜炎が発生し、その後母親が用いていた白粉(おしろい)に含まれていた鉛が原因であることが判明した事件がありました。
鉛の使用量は産業革命以降飛躍的に増大しました。北極圏の鉛汚染調査によれば、1750年に比べて1940年には約4倍になり、その後の30年間にさらに約3倍に上昇しています。
後者は、ガソリンへの4エチル鉛の添加が主たる原因であることから、近年有鉛ガソリンの使用規制が世界的に進められています。
●鉛の用途(国内)
鉛の国内総需要量は、年約30万トン(2006年)で、他の金属と比べても非常に多いのが現状です。
日本では比較的早くからガソリンの無鉛化が行われていましたので、現在の国内の用途の大半は自動車のバッテリーなどの鉛蓄電池で、全体の80%以上を占めています。
この他、はんだ、塩化ビニル樹脂の安定剤、クリスタルガラス、散弾銃の弾丸、釣りの錘、蛍光灯、ブラウン管、電線被覆鉛、塗料、顔料などに使われています。
現在は、家庭用の塗料には鉛は含まれていませんが、建物等の構造部材に使用される下塗りの錆止め塗料や、黄色・オレンジ色の上塗り塗料には鉛が含まれているものがあります。
また、中国など外国製の製品には、顔料・塗料などに鉛が使用されているものがありますので、注意が必要です。