・広報誌「ちょうせい」
第35号(平成15年11月発行)
大型ディーゼル車の環境対策
独立行政法人交通安全環境研究所 小 高 松 男
1.まえがき
ディーゼル機関は高効率で耐久性のあることから、自動車物流の主役として幅広く使用されてきた。
しかしながら、近年、ディーゼル車は大気汚染の元凶であるとされ、特に車両総重量3.5tを超える大型ディーゼル車は大気汚染への寄与が高いといわれており、早急な対策が求められている。
本稿では、大型ディーゼル車の排出ガス低減に向けての最近の規制や技術開発動向を紹介する。
なお、ディーゼル車の排気中、問題とされているのは窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)であり、本稿ではこの2つの物質に絞って記述することとする。
2.わが国における大気汚染の状況現在わが国では、浮遊粒子状物(SPM)や二酸化窒素(NO2)等の数種類の物質について環境基準が定められている。
環境省はこれらの物質について環境基準の達成率を見るために、全国に測定局を設置している。
自動車交通量の多い特定地域(東京、大阪、名古屋地区等)でみると、図1に示すようにNO2は2000年度では、環境基準を達成した自動車排ガス測定局は172局の内、108局(62.8%)で、1999年度(171局の内101局(59%))と比較して環境基準達成率は向上しているが、依然として厳しい状況にある。
2000年度では、自動車からの全NOx 排出総量は約64万トンで、そのうち約80%がディーゼル車からの排出と推定されている。
図2に示すように、SPM も低い水準で推移し、2000年度では、環境基準を達成した自動車排出ガス測定局は148局の内、77局 (52%) で1999年度(142局の内90局(63.4%))と比較して達成率は減少し、厳しい状況にある。
特定地域における自動車の寄与率は約40%で100%ディーゼル車からの排出と推定されている。
図1 図2 図をクリックして拡大してご覧下さい