中国産加工食品の有機リン系農薬による汚染2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・以上のような経緯から、次のような問題点が浮かび上がってくる。
 中国に限らず、「ホリドール」という商標名で販売され、使用されてきたパラチオンメチルを数年前禁止にしたタイでも、禁止後、その農薬の徹底的な回収が行われずに、かなり長い間その農薬が市場に残っており、農民による使用もすぐには無くならない。

したがって、中国政府が2007年1月に、メタミドホスを全面禁止にしたとしても、中国の国内のどこかでそれが使われ続ける可能性は否定できない。

また、国内で使用禁止になった農薬が海外に輸出されることはよくあることで、2007年9月にカンボジアのマーケットで、タイ語で「ホリドール」と書かれた農薬が、うず高く積んで売られているのを私自身目撃した。

日本でも、DDT、BHCが使用禁止になったとき、大部分は回収されて埋め立てられたが、一部は東南アジアを中心に各国に輸出され、外務省が「これは公害輸出になるので自粛してほしい」と警告した文書が残っている。

自国で禁止した農薬を海外に輸出することは、ロッテルダム条約により、事前通告・承諾が無い限り禁止されているが、これを国際的に徹底させる必要がある。
 ジクロルボスは、発がん性がアメリカやイギリスで問題になったが6)、日本では、PRTR法による第一種指定化学物質となったものの、食品を貯蔵する倉庫の中で徐々に揮発させて用いたり、家庭用殺虫剤としても使われ続けている。
 また、有機リン系農薬に代えてピレスロイド系殺虫剤を使えばよいという意見もあるが、これでは本当の解決にならない。

日本政府は、合成ピレスロイドのペルメトリンを練りこんだポリエチレン繊維で蚊帳を作った住友化学の提案に乗って、ユニセフの「マラリヤ撲滅作戦」の一環として、アフリカでこの蚊帳の普及に乗り出しているが、ペルメトリンは、乳幼児の脳の発達を阻害する可能性があると、富山医科薬科大の津田らによって報告された論文7)を引用して、黒田洋一郎氏は警告している。

蚊帳に付けられている「触れたら、手を洗うように!」という注意書きはアフリカの現実の中で意味をなさない。

農薬入りでない普通の蚊帳の普及にこそ、日本の国際協力の予算が用いられるべきであり、農薬汚染の輸入食品による中毒の再発を防ぐためには、日本の食糧自給率を上げると共に、中国を含めたアジア・アフリカなどの諸国に、農薬に依存しない有機農業の普及という面で、日本の国際協力が行われるべきであろう8)。

1)Consolidated List of Products Whose Consumption and/or Sale have been Banned, Withdrawn, Severely restricted or Not Approved by Governments, 4th Ed., United Nations, 1991.
2)Pesticide Handbook, 3rd Ed., PAN Asia & Pacific, 1991.
3)Sustainable Agriculture Country Profile; China, Jiang Xi-Liu & Hua Xiao-Mei, PANAP, IFOAM,1997.
4)Pesticide Handbook, ADB, 1987.
5)「最新農薬データブック」第3版、ソフトサイエンス社、1997年。
6)植村振作他著「農薬毒性の辞典」改訂版、三省堂、2002年。
7)Imamura,L.et al., J.Pharmacol.Exp.Therap., 295, 1175(2000).
8)「食糧増産援助から飢えをなく
 すための農業・農村支援への抜本的転換を求めて」食糧増産援助を問うネットワークの外務省への提言書、2004年10月。

農薬名 LD50 日本での許認可 中国での許認可
メタミドホス 20mg/Kg 登録されたことが無い 1982年野菜などに使用禁止
ジクロルボス 50mg/Kg 認可・使用されている 認可・使用されている
パラチオン 2mg/Kg 1971年登録抹消 1982年野菜などに使用禁止
パラチオンメチル 14mg/Kg 1971年登録抹消 同上
ホレート ♂3.7mg/Kg 登録されたことが無い 同上
*LD50は、実験動物のラットに餌に混ぜて与えたとき、48時間以内に半数が死ぬ量。