・【低周波音対策】
○楊井 次に低周波音の対策面はどうでしょうか。
○塩田 最近、外国製の安いエアコンが入って来るようになり、これが静かでないことから問題になるのではないかと心配しています。
メーカーなどが、室外機の騒音対策をきちんと考えて制御することが重要となっています。
個々の機械・設備等が静かになったことは間違いないけれど、昔とは比較にならない多数の機械・設備等が設置されるようになってきました。
個々には静かな機械・設備等でも100台集まれば騒音のレベルは100倍、すなわち20デシベル上がることになりますから、それをどのように低減するかという問題もあると思います。メーカーは、そこまではまだ考えていないと思います。室外機がこれだけ騒音・低周波音被害の原因とされている現実については、メーカーや業界団体としてもきちんと認識して、対策を考えて欲しいと思います。
○針塚 それは、消費者が賢くならなければということでもあると思います。機械の静音性能をどれだけ評価するか。清瀬・新座の事件では、新しい機械だったからメーカーがコストを考えずに対策を検討してくれたと聴いていますが、多くの事例では、古くなって保証期間が切れた後に騒音・低周波音、振動の問題が生じて来る。
安いものを買って、設置場所、設置方法を考えずに設置して、後でトラブルとなれば、結局、対策費用で高く付くということになりかねない。
そのリスクは消費者が負担することになる訳です。
○塩田 騒音、振動対策の初期投資を怠ると、長い目で見ればかえって不経済となるということですね。そのことは、広報活動で広く知ってもらう必要もあります。
特に、メーカー側にも知ってもらう必要がありますね。
それは、我々が、所属している日本騒音制御工学会も発信しなければならないと思うし、我々が関与している非営利団体(NPO)でもやるべきなのかもしれません。
被害者の人たちが組織しているNPOで話を聴いていると、清瀬・新座や荒川のような事例は氷山の一角という感じがします。
○楊井 騒音、低周波音の事件で、どのように解決に持って行くかという点についてはいかがですか。
○塩田 騒音、低周波音の被害者は、それまでにいろいろと経過があるからでしょうか、非常に感情的になっていて、相手の言い分を全く聞かないで、ただ相手を罵倒するだけという状態になっている人も少なくないようです。
しかし、「国際標準(ISO)で定められた感覚閾値まで下げて」というようなことは、社会的にも要求しにくいわけです。
騒音・低周波音対策は費用対効果の世界ですから、「冷静に話し合わなければ解決できませんよ」ということをまず理解してもらうことが必要です。
それから、例えば、産総研で、「このくらいなら我慢できる」という音圧レベルや周波数成分を測定してもらい、発生源側でも、「このくらいなら技術的、コスト的に低減可能だ」というコストレベルを探り、両者が歩み寄って行くことが重要です。
そうやって解決できた例もあります。
○落合 たとえば荒川の事件では、申請人の住宅の屋内で低周波音のレベルが実験室実験で得られた「気になる-気にならない曲線」による評価値を超えているという測定結果を基に、解決策が検討されました。
そして、双方の話し合いがもたれ、最終的に、寄与の大きいエアコン室外機等を移設するが、移設先は経済性を考慮して決める、ただし万一評価値を超えた場合は、さらなる対策を講じることという合意に至ったわけです。
また、一方で、私のところ(小林理学研究所)にもときどき被害者から電話の問い合わせがありますが、状況を細かく聞いて、それを踏まえて科学的な説明やアドバイスをすることで納得して電話を切る方も少なくありません。
話をよく聞くということが、実は問題解決になるということがあるように思います。
○針塚 それは、専門家に話を聞いてもらい、説明を受けることで、気が済むというか、我慢すべきレベルだと納得するという場合もあるのでしょう。
言い分をよく聞いて、疑問に答えるというのは、苦情処理や調停の場でも重要なことだと思います。