・4 具体的事例の検討
1)各事例の内容
それでは、以下の3つの具体的事例で検討してみましょう。
以下の各事例の苦情申立者(X)はいずれも後住者であるとします。事例1・事例2は、騒音の事例、事例3は、低周波音被害の事例です。
事例1は、第二種区域(住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域)・規制基準超過事例でして、法律(騒音規制法)によって「スジ」が示されていますが、この「スジ」が当事者間で合意されたとするルールによって影響を受けるのか、影響を受けるとすれば、どのような場合かということが問われています。
事例2は、第一種区域(良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域)と第三種区域(住居の用にあわせて商業、工業等の用に供されている区域であって、その区域内の住民の生活環境を保全するため、騒音の発生を防止する必要がある区域)にまたがる、第三種区域の規制基準以下の事例です。実務でよく生ずる、解決困難な事例の1つです。
法律によって、その「スジ」が明確に示されてはおらず、この「スジ」を当事者間の合意によって新しく作り出さなければならないのですが、その場合の新ルールの基準は何かが問われています。
最後の事例3は、低周波音被害の事例です。
環境省では、およそ100Hz以下の低周波数の可聴音と超低周波音(20Hz以下の音波)を含む音波を低周波音といっています。
低周波音には、ご承知のとおり、規制基準はもとより、環境基準も存在しない点に厄介な問題があります。
また、最初に述べましたとおり(前記3、1))、この場合、受忍限度以前に、心理的被害や体調不良の原因が低周波音か否かという因果関係の存否自体が問題となるのです。