騒音・低周波音の事例2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・3 公害苦情相談と基本的な「スジ」―民法
の不法行為規範
1)民法709条―不法行為規範
民法709条によりますと、違法な加害行為(故意・過失ある行為)によって(因果関係)、損害が発生した場合、被害者は、加害者に対し、損害賠償を求めることができるとされています。
ここでいう違法性の要件に関係するのが、受忍限度論であり、騒音では、主としてこの点が問題となります。

他方、低周波音被害では、そもそも、受忍限度以前に、加害行為と損害との因果関係自体の存否が問題となります。
このように、一口に騒音被害といっても、狭い意味での騒音被害なのか、低周波音被害なのかによって、問題とすべき不法行為法の要件事実が異なる点に注意が必要です。
2)違法性の要件としての受忍限度論
不法行為法の目的・機能は、加害者の活動の自由の保障と被害者の救済(損害填補)との調整を図るという点にあります。

受忍限度論の考え方は、このような不法行為法の目的・機能に照らして、生活妨害型の不法行為において、日常生活を送る上で、生活上の対立利益の調整(特に所有者の自由との調整)を図り、その被侵害利益の性質と侵害行為の態様等を相関的・総合的に判断して、不法行為の違法性を判定する枠組みであるということができます。

受忍限度の具体的衡量要素としては、被侵害利益の性質とその内容、侵害行為の態様とその程度が重要です。

侵害行為の態様とその程度としては、q地域性、w規制基準違反、e後住性がポイントになります。
そのほか、侵害行為の公共性の内容と程度、侵害行為の開始とその後の継続状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等も考慮要素となります。
以上の内容は、最判昭56.12.16民集35巻10号1369頁、最判平7.7.7民集49巻7号1870頁などの最高裁判例が示す考え方です。
侵害行為の態様とその程度としてポイントになると申し上げました、上記②の規制基準違反の点についてもう少し詳しく説明します。
3)受忍限度と公法上の基準(規制基準と環境基準)
ご承知のとおり、公法上の基準には、事業者等の遵守すべき基準である「規制基準」(環境基本法21条1項1号参照)と、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準である「環境基準」(同法16条1項参照)とがあります。

受忍限度との関係で、特に問題となるのは、遵守義務のある規制基準です。

といいますのも、規制基準を超えれば、原則として違法と考えられますが、これを下回ったからといって、直ちに適法とはいえず、他方、環境基準を下回る場合は、原則として適法といえますが、これを上回る場合でも、直ちに違法であるとはいえない、ということになるからです。
騒音規制法上、規制基準とは、特定工場等において発生する騒音の特定工場等の敷地の境界線における大きさの許容限度をいい(同法2条2項)、特定工場等を設置している者は規制基準を遵守しなければならないものとされています(同法5条)。

そして、規制基準は、都道府県知事において環境大臣の定める基準の範囲内で(同法4条1項)、又は市町村において条例で(同条2項)設定されることとされています。
この規制基準をめぐる受忍限度判断(民法の不法行為規範)は、公害苦情における騒音事例を考える上での最も基本的な「スジ」になります。