科学は環境/健康問題を解決できるか | 化学物質過敏症 runのブログ

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・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin01.html


・ニュースレター 第54号 (2008年10月発行)

科学は環境/健康問題を解決できるか
~病気のない社会への新たな可能性
講師:ジョン・ピーターソン・マイヤーズ氏
(『奪われし未来』共著者)

1.はじめに
 国民会議10周年シンポジウムの午後の部は、ジョン・ピーターソン・マイヤーズ氏の「ヒトの健康を改善させ得る近年の新たな発見について」と題する講演から始まりました。

マイヤーズ氏はまず、午前の部の講演で森教授が強く主張された予防医学の必要性が、実は1970年代半ばには一部の科学者から提起されていたことを指摘しました。

そして、こうした指摘がつい最近まで省みられなかった不幸が様々な疾病発症の遠因になっていることを踏まえ、自身が提唱している新しい科学観も正しく検証されるべきであると述べました。

2.従来の科学観に対する発想の転換
 マイヤーズ氏は、講演を通じ、従来の科学観に革命的な発想の転換を迫る発見が近年相次いでいることを強調されました。

具体的には、今まで科学者の間でも問題意識の低かった、ごく低濃度の汚染物質による異常な遺伝子の働きが観察されていること、こうした低濃度の汚染物質による影響が高濃度の場合と全く逆の結果になることもままあり、高濃度試験では低濃度曝露の影響を十分な検証ができないこと、複数の化学物質の相互作用(複合汚染)がどのような影響を与えるかは予測不可能であること、r人が成年に達してから発症する疾患の中には胎児期の環境に原因を見つけられるものもあること、の4つの発見です。

では、これらの発見はなぜ画期的なものと言えるのでしょうか。

3.4つの発見
(1)低濃度汚染物質の影響とその検証方法
 マイヤーズ氏は、遺伝性疾患が従来から研究されてきた遺伝子自体の欠陥による場合だけでなく、正常な遺伝子の異常なふるまいによっても引き起こされることを指摘した上で、哺乳瓶や缶詰のコーティングなど樹脂全般に使われるビスフェノールA(BPA)に関する研究から判明したことを紹介しました。

動物実験の結果、出産する前後に胎児がBPAを吸収すると、その濃度が10ppbというごく低い濃度であっても成人後前立腺がんにかかる原因となることがわかったのです。

また、母体のBPAの値と流産の危険性の間にも相関関係が認められています。
 もっとも、これらは動物実験の結果でありこのことだけからBPAのヒトへの影響を正確に把握することはできません。

しかし、ヒトへの影響を把握できないというところに問題の本質がある、とマイヤーズ氏は述べました。

そもそも従来の科学観は、ある一定の値を下回る濃度であれば汚染物質のヒトへの影響は無視しうる、という前提に立っています。

しかし、濃度が低くても汚染物質の分子数は膨大な数になります。

従って、低濃度の化学物質の影響を一律に無視することはできません。しかも、汚染物質の濃度によって遺伝子へ異なる影響が生じることがわかってきています。

つまり、従来の科学観にたった検証方法では、例えばBPAのヒトへの影響一つをとっても正確には理解できないのです。

実際、低濃度のBPAの影響によって前立腺がんを発症するという事実も、実はホルモンに関する全く別の研究から偶然に判明したもので従来の毒性学の研究手法では判明しないものでした