【環境ホルモン研究の最先端】4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin01.html


・ニュースレター 第42号 (2006年9月発行)


連載第2回:【環境ホルモン研究の最先端】
環境改善型予防医学の確立を
千葉大学環境健康フィールド科学センター助手 戸高恵美子

環境ホルモン問題の急展開と急激な失速
 環境ホルモン問題がマスコミなどで取り上げられ始めたのは1997年初頭頃からでした。

環境中の隅々にまで満ちている微量かつ多種類の化学物質の中に、動物や人体に取り込まれると内分泌(ホルモン)の働きを阻害したり乱したりする物質がある、という報告は、驚きとともにすぐには信じがたいという疑問を伴って急速に日本社会に広まりました。
 しかし、一部マスコミがあまりにセンセーショナルに取り上げすぎたため、却って一部産業界からの反発を買い、研究の現場が混乱するという皮肉な現象も見られました。その結果、環境ホルモンに対する関心は急速に失われ、今では研究結果が出ても一般の人の目に触れることは極端に少なくなりました。
 私は、この一連の出来事を、当初は一専門新聞の記者として実際に取材し、後半は大学の一研究者として研究し、結果を学会に発表するなどして実体験してきました。
 私が新聞記者から大学医学部の研究者になろうと思ったのには理由があります。
 環境ホルモンの取材をしていると、健康への悪影響を疑われる物質が次々と調査研究対象として候補に挙げられていきました。政府・行政は、当初巨額の予算を付けて因果関係を明らかにしようとしましたが、大量に暴露することで重篤な症状が出る、たとえば水俣病とかカネミ油症、四日市ぜんそくのような公害、あるいはガンなどのような疾病とは違って、微量の化学物質で思春期の早期化や生殖機能の異変などが起こるという、従来考えられてきた健康影響とはまったく異なる症状であるため、動物実験ではなかなか人間における因果関係を明らかにすることができませんでした。
 産業界も同時に大量の実験動物を使って毒性試験を行いましたが、行政・産業界いずれによる実験でも、ほとんど影響なし、あるいは魚類には認められるがげっ歯類には認められない、すなわちほ乳類には認められないと結論づけられました。
 しかし、マウスやラットなどのげっ歯類はサルを使った場合と違って寿命が短く生まれる子供の数も多いため、確かに数世代への影響が短期間で見やすいというメリットがありますが、子宮や胎盤の構造が人とは異なるため、このような見極めの難しい現象を本当にそのまま人にあてはめて「影響はない」と結論づけていいものか、疑問が残ります。

あまり知られていませんが、げっ歯類の受精卵は90%以上が出産に至りますが、人の受精卵は4割程度しか出産に至りません。げっ歯類を使った実験には多くのメリットがある一方で、自ずと限界もあるのです。
現に、1960年代初頭に起こったサリドマイド薬禍事件では、げっ歯類を使った実験では影響が出ず、霊長類であるサルを使った実験では手足が短くなる先天異常が出ました。不幸なことに、現実に人に被害が広がってから、げっ歯類を使った実験の不備の可能性が指摘され、サルを使った実験が行われたのです。被害者にとっては、遅きに失した対応でした。