エチニールエストラジオール | 化学物質過敏症 runのブログ

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・東京都健康安全研究センター環境保健部生体影響研究科より


・E-1.エチニルエストラジオール(Ethinylestradiol, Ethynylestradiol) EE  最初のページヘ

1)ヒトの健康影響に関連する情報
 エチニルエストラディオール(EE)は経口避妊薬(いわゆるピル)の1成分として使用されており,ここではピルのヒトへの健康影響に関した報告を取り上げる.

ピルのヒトへの健康影響(有益な作用や副作用)を考えるに当たっては,ピルに含まれるEEの量やもう一方の成分であるプロゲスチン*の種類やその量が時代と共に変化してきていることを考慮に入れる必要がある.

これは避妊効果を保ちながら副作用を軽減させる方向での改良であり,従来問題となってきた循環器系での心筋梗塞や出血性あるいは虚血性の発作1),また血液凝固系での血栓の形成等2)に対する副作用もその使用量と共に変化してきており,婦人科関連の避妊効果以外の有益な作用3)も注目されている.
*プロゲスチンはプロゲステロンの様な黄体ホルモン様作用を示す物質の総称であり,プロゲストーゲンとも称される.

 乳癌に対するエストロゲン療法に関心が集まっている.従来,乳癌治療後の患者に対しては禁忌であったこの治療法の安全性や,プロゲスチンとの併用による乳癌の再発や死亡の減少に効果が期待されている4).

 骨粗しょう症に関して,経口避妊薬の使用と骨量との間に正の相関がみられ,EEで25から35μgが適量と報告された5).

 身体発育不全や青春期での成長異常の是正,骨量の改善あるいは適正な女性化を促す目的で,ターナー症候群の治療に用いられる.その時のEEの適当量は体重1kg当たり約100ngである6).
投薬後の血漿中のEE量は,人種間や個人間で著しい変動が薬力学的に認められた7,8).

 EEのヒトでの代謝に関する総説である.EEは水酸化され,更にメチル化及びグルクロン化を受け,抱合体として排泄される.水酸化には,肝臓のチトクロームP-450の酵素が重要な役割を果たしている9).
EEの物理化学的性状や異名,製造法,用途及び一般的毒性等に関する総説である10).

 EEを含む外来性の性ホルモンとヒトの発癌に関する総説がある11).
 EEを例として,使用している薬物が下水を介して環境中への排出とその拡散した物質の毒性を統計的に調べたところ,環境への影響は無視できるものであったとされた.このデンマークでの調査は,薬物を使用している地域で参考になると考えられる12).

 EEの職業性暴露に関しての報告である.1976年プエルトリコの経口避妊薬の工場で,12ヶ月間暴露した男性労働者の20%及び女性労働者の40%にエストロゲン過多の症候が認められた.

男性では女性型乳房や性欲減退があらわれ,女性では暴露期間で出血がみられた.血漿中のEE量は,暴露していない労働者の2倍であった13).

2)内分泌系・発生過程に対する影響
 CDラットの妊娠16-20日にエチニルエストラジオール(EE),ジエチルスチルベストロール(DES),17β-エストラジオール(E2) のそれぞれ0.004,0.04,0.4mg/kgを皮下投与した.出生児雌の子宮重量がEEとDESで用量に伴い増加した14).

 ICRマウスの妊娠11-17日(連続),妊娠8日のみ,妊娠11日のみにエチニルエストラジオール(EE) 0.02,0.2,2.0mg/kg/日を経口投与した.

連続あるいは単回投与のいずれにも胎児死亡が用量相関的に認められた.胎児の成長抑制は連続投与でのみみられた.妊娠11日単回投与のEE 2.0mg/kg群に雌胎児の乳首の異常肥大が高頻度で発現したが,その他の異常は連続,単回投与においても認められなかった15).

 ICRマウスの妊娠11-17日にエチニルエストラジオール(EE)0.02,0.2,2.0mg/kg/日を経口投与し,妊娠18日の胎児の外表及び内蔵異常について観察した.

間質組織での単位面積当たりのライデイッヒ細胞数が用量相関的に増加した.しかし,EE2.0mg/kg投与で認められた停滞精巣のマウスでは正常のものと比べ,ライデイッヒ細胞数は有意に少なかった.

EE経胎盤投与でのライデイッヒ細胞腫瘍への悪性化を示唆16).

 ICRマウスの妊娠11-17日にエチニルエストラジオール(EE)0.02,0.2mg/kg/日を経口投与し,妊娠18日の雌胎児の卵巣を組織学的に観察した.卵胞細胞の過形成が認められ,それは髄質部に限局していた17).

  Wistarラットの生後2日目から1日おきに12日までジエチルスチルベストロール(DES)0.1,1,10μg/kgあるいはエチニルエストラジオール(EE)10μg/kgを皮下投与した.精巣重量および生殖細胞,セルトリ細胞の減少が認められた.卵胞刺激ホルモンのレベルが上昇した18).

 幼若ラット(19日齢)および卵巣摘出ラット(60日齢)を用い,エチニルエストラジオール(EE)0.0001-10mg/kgの量を4日間,経口あるいは皮下投与した.卵巣摘出したラットの子宮重量の用量に伴う増加と総コレステロールおよびHDLコレステロールの用量に伴う低下が認められた19).

 エチニルエストラジオール(EE)の化学および生物学的情報が載っている20).
 日本ウズラの受精卵の孵卵3日目にエチニルエストラジオール(EE)0.7,2,6,19,57ng/g卵およびジエチルスチルベストロール(DES)2,6,19,57,170ng/g卵を卵黄に1回投与し,15日に解剖した.EEの2ng/g卵以上の投与で全ての雄胚子の雌性化と雌胚子のミューラー管の奇形が認められた.DESの強さはEEの1/10-1/3であった21).

 SDラットの生後1-5日まで5日間,エチニルエストラジオール(EE),ジエチルスチルベストロール(DES)および抗エストロゲンであるクロミフェンサイトレート(CC)の各々0.001-0.01μg/ラット/日を皮下投与し,経時的な子宮重量および組織変化を観察した.

EEおよびDES処置動物で子宮重量の増加及び内膜腔上皮の肥厚が見られた.

子宮重量は7日齢頃より下降し,11日齢以後対照値よりも低い値を示した.子宮内膜腔上皮の高さは重量と並行して変化した.

また,EE及びDESにより子宮(内膜)腺の早熟と数の増加が7日齢頃より見られたが11-13日齢頃には,処置のものに比べ60%程度にとどまった22).

 雄SDラットに交配前4週間,エチニルエストラジオール(EE)の0.1,0.3,3,10mg/kg/日を経口投与した.3及び10mg/kg投与群では生殖能力が消失した.0.1及び0.3mg/kg投与群では交尾率の若干の低下がみられたが受精率に影響はなかった.

精子数の減少および精巣,精巣上体,前立腺,精嚢の萎縮に伴う重量の減少および精母細胞,精子細胞,セルトリ細胞,ライデイッヒ細胞の退行性変性がすべての群で認められた23).