・東京都健康安全研究センター環境保健部生体影響研究科より
・B-7-3.ジブロモクロロプロパン(Dibromochloropropane)
1)ヒトの健康影響に関連する情報
米国カリフォルニア,イスラエルにおいて,dibromochloropropane (DBCP) の暴露を受けた生産工場労働者,農業従事者に無精子症,乏精液症,卵胞刺激ホルモンの増加,突発性流産の増加,女児出生数の増加の報告がある1-5).
カリフォルニアにおいて,飲料水汚染 (最高5.75ppb) と出生児体重および出生数の間に関連性は見られなかった6).
ハワイにおいて,DBCP の高濃度の汚染が報告されている7).
2)内分泌系・発生過程に対する影響
Long-Evans ラット雄に DBCP 0,5,25mg/kg/日を6ヶ月間皮下投与.25mg/kg 群で精巣,前立腺,精嚢重量の減少.血清中 LH,FSH 値の上昇.血清中テストステロン値の低下を認めた.無処置雌ラットとの交配後の催奇形性その他の生殖毒性に影響なし8).
Wistar ラット雄に DBCP 0,10,50,75,100mg/kg を1回 皮下投与.100mg/kg 群全例死亡.用量に関連したライディヒ細胞の退行性変性および数の減少,輸精管の萎縮,LHレセプター mRNA,FSHレセプターmRNA の減少を認めた9).
SD ラットの妊娠 14.5 - 19.5日,16.5 - 19.5日または18.5 - 19.5日にDBCP 25mg/kg/日を投与後分娩させ雄ラット生殖器への影響観察.精巣重量低下,テストステロン値,LHレセプター含量の低下.精巣組織の退行性変化を認めた10).
SD ラット雄の2 - 20日齢および45 - 65日齢に DBCP 0,1,5,10,20mg/kg を隔日皮下投与.精巣,精巣上体,精嚢の用量に伴う重量低下.5mg群精巣の退行性変性.10mg 群輸精管の閉塞.アンドロゲン値の低下を認めた11).
ニュージランド白色ウサギ雄に DBCP 0,0.1,1.0,10ppm を6時間/日,5日/週,14週間吸入暴露.1.0,10ppm 群で精子数の減少.精子形成は1.0 ppm 群で回復するが10ppm 群では不完全回復.10ppm 群で重度の精巣の萎縮を認めた.無処置雌との交配後の生殖に関わる所見に異常なし12).
Wistar ラットの妊娠 12 - 20日の各妊娠日に DBCP 40mg/kg を1回または妊娠11 - 18日に DBCP 10mg/kg/ 日を連続皮下投与.さらに妊娠13日に DBCP 0.1mgを卵黄嚢内投与.着床後の胚子死亡が増加.分娩時胎児死亡増加および胎児体重減少13).
3)実験動物での臓器障害性に関する情報
精巣,精巣上体重量減少,精子数減少:ラット 皮下 50mg/kg 24時間後14)
血中 FSH, LH 値増加:ラット 皮下 50mg/kg 4週間後14)
腎尿細管壊死:ラット 腹腔 85μmol/kg 48時間後15)
精細管萎縮及び壊死:ラット 腹腔 170μmol/kg 10日後15)
精巣及び腎DNA障害:ラット 腹腔 5μmol/kg 60分後15)
尿細管上皮細胞核異型性:ラット 経口 200mg/kg 28日後16);尿細管壊死再生後
4)腫瘍発生に関する情報
線維肉腫:ラット 皮下 100mg/kg×2回/週 12週間 16週間後17)
副腎皮質腫瘍:ラット 吸入 600ppb/6時間 2年間,3ppm/6時間 84週間18)
呼吸器系腫瘍:マウス 吸入 600ppb/6時間 2年間,3ppm/6時間 84週間18)
胃扁平上皮癌,乳腺腺癌:ラット 経口19)