・東京都健康安全研究センター環境保健部生体影響研究科より
・B-3-b-4.trans-ノナクロル(trans-Nonachlor)
1)ヒトの健康影響に関連する情報
trans-ノナクロルはクロルデンの一成分であるため,暴露の指標として測定される.
ノースカロライナとアイオワ州の農場従業員の血清レベル量を比較したところ,ノースカロライナの従業員が有意に高かった.
生体濃縮による年令差の可能性がある1).
74名のフィンランドの合板工場の作業員の血清から多量に検出されたが,血中濃度と頭痛やめまい,目に対する刺激との関連はなかった2).
米国のいなかに居住する85名の住人の血中濃度を測定すると増加がみられた.
これは,自家飼育のニワトリの卵や自家栽培の野菜の摂取に起因すると思われる3).
フィンランドと米国,カナダの一般人の脂肪組織での蓄積を1973年から1983年にかけて調査したところ,0.004ppm から0.1ppm 以上であった.
他の有機塩素系殺虫剤の脂肪組織における蓄積をまとめた総説である4).
2)内分泌系・発生過程に対する影響
酵母を用いた系で trans-nonachlor 10μM は弱いエストロゲン活性を示した5).
ワニの卵管から抽出した蛋白を用い,エストロゲンレセプター (ER) とプロゲステロンレセプター (PR) 結合への競合作用を調べている.trans-nonachlor はβ-エストラジオールのERへの結合を阻害6).
3)実験動物での臓器障害性に関する情報
クロルデンの主成分なのでクロルデンを参照.
4)腫瘍発生に関する情報
該当する文献は見いだせなかった.
5)変異原性に関する情報
該当する文献は見いだせなかった.
6)致死毒性に関する情報
LD50 500mg/kg ラット 経口7)