・東京都健康安全研究センター環境保健部生体影響研究科より
・B-3-b-3.ヘプタクロルエポキサイド(Heptachlor epoxide)
1)ヒトの健康影響に関連する情報
オーストラリアにおいて,初産婦の乳中から乳児への有機塩素系殺虫剤の移行を調査し,HCB,chlordane,dieldrin および heptachlor については,一部 ADI を越える場合があった1).
オーストラリアの797名の母乳中の dieldrin,heptachlor epoxide,oxychlordane の濃度について分析を行った結果,住宅の白蟻駆除が大きな要因となっている.そのうち heptachlor epoxideの関与する率が一番高かった2).
オーストラリアにおける母乳中の有機塩素剤の濃度および乳児への移行の調査で,heptachlor epoxide は 30% の母乳から検出(平均0.061μg/g脂肪)された.暴露をうけた乳児の一日摂取量は平均0.254μg/kg で,全例 ADI を越えていた3).
米国ノーステキサスにおいて1987~1988年にかけ職業的暴露を受けていない35名の剖検から得られた脂肪組織中の有機塩素系殺虫剤の分析を行ったところ,heptachlor epoxide の平均値は0.086ppmであった4).
ハワイにおいて,1981~1982年にかけ15ヶ月にわたって市販の牛乳が heptachlor epoxide に汚染された.原因は乳牛に heptachlor を散布したパイナップルの葉を与えたことで牛乳中の濃度は1.2μg/g脂肪であった5).
アジア,オセアニア地域の食品中の有機塩素系殺虫剤の濃度に関する総説6).
オーストラリア,パプアニューギニア,ソロモン諸島の食品中の heptachlor epoxide を 含む有機塩素剤の濃度の報告がある7).
Heptachlor に関する総説8).
2)内分泌系・発生過程に対する影響
該当する文献は見いだせなかった.
3)実験動物での臓器障害性に関する情報
中枢神経毒性 (ペンチレンテトラゾ-ルによる中枢神経興奮を阻害) :マウス 腹腔 1.31×10-4 mol/kg/日9)
総説10)
4)腫瘍発生に関する情報
肝癌:マウス 混餌 10ppm 24ヶ月11)
総説12)
5)変異原性に関する情報
AMES 試験陰性:サルモネラ TA1535,TA1536,TA1537,TA1538 1mg/プレート (±S9)13)
修復試験陰性:サルモネラ TA1538/TA1978,大腸菌 K-12,WP2 0.125-2mg/ディスク14)
不定期 DNA 合成増加:SV40形質転換ヒト線維芽細胞 VA-4 10μM(+S9) 8時間15)
6)致死毒性に関する情報
LD50 15mg/kg ラット 経口16)
LD50 39mg/kg マウス 経口17)